えっ……?
その時、以前先生が私に話してくれたことを思い出した。
じゃあ、あの奥さんが倒れた日は、先生の誕生日だったの?
『涼花ちゃんは、どこまで聞いている?』
「誕生日のことは、話してもらえませんでしたが
奥さんとの事情は、全て話して下さいました」
『そうか……涼花ちゃんに話したか。
まぁ、付き合っているのだから当然かもな。
藤崎はさ、未だに彼女を死なせた原因は、自分だと
思っていて誕生日が大嫌いになっててさ。
誕生日の話をされるのを酷く嫌うんだ。
そりゃあさ~沙織ちゃんの命日に自分の誕生日を
祝われても嬉しくない気持ちは、分かるけどさ~』
私は、その言葉を聞いて胸が酷く痛んだ。
それは……辛すぎる。
先生に、そんな辛い誕生日をもう二度と
味あわせたくないが、ならどうしたらいいのだろうか?
そう考え込んでいると睦月君が慌てたように
私の服をグイグイと引っ張ってきた。
「どうしたの?睦月君……?」
不思議そうに尋ねようとしたらゾクッと背筋が凍った。
何?この殺気……?
恐る恐るその方向を見ると先生が凄い怖い表情で
腕を組みながら立っていた。
明らかに怒っているのが分かるぐらいにだ。
ビクッと身体が震えた。
どうしよう……話を聞かれちゃった!?
『もしもし?涼花ちゃん?』
浜野さんが呼んでいるが、それ所ではなかった。
先生は、怖い表情のまま無言で私に近づいてくる。
するとスマホを強引に取り上げられ電話を切られた。
あぁっ!?消しちゃった!!
消した後……ポイッと私に向かって放り投げられた。
慌てて受け取ると先生は、ギロッと睨み付けてきた。
「俺の誕生日が何だって?」
いつも以上に低い声で質問される。
うっ……答えられずに私は、黙りこんだ。
沈黙な空気が流れた。怖い……凄く。
「お前……誰の断りもなく勝手に
人の誕生日を探っているんだ?」
「それは……」
どう言い訳したらいいか分からず黙りこんだ。