「それでは、可愛い園児達のお遊戯を楽しんで下さい」

園長先生が頭を下げると最初の園児達が
ステージに集まる。何組かやった後に
睦月君が居るキリン組の発表が始まった。
『白雪姫』小さな園児達の劇は、とても可愛らしい。
茉莉華ちゃんのお姫様姿は、よく似合っているし
周りの子に比べて上手だった。

「あの子ですよ先生。話していた茉莉華ちゃんは」

「ふーん」

先生に教えてあげるも興味なさそうに言った。
あら、反応が睦月君と一緒だわ。
すると王子様と馬の格好をした睦月君が現れた。
私が作った馬の衣装に馬のお面。
若干、王子様役の子より目立つ気がするけど
とても可愛らしい。

睦月君の台詞は、一言鳴くだけ。
もし言えなくてもいいように先生が配慮してくれたらしい。
馬らしく見えるように何度も家で練習したし
大丈夫なはずだ。頑張って!!

私が祈っていると白雪姫の茉莉華ちゃんは、
毒りんごを食べて眠りについてしまった。
そして王子様のキスで目を覚ました白雪姫は、
王子様と結ばれる。最後に馬の睦月君が鳴くと
音楽が流れ皆で歌って劇が終わるはずだった。

しかし茉莉華ちゃんが立ち上がろうとしたその時だった。
張りぼての一部が外れ茉莉華ちゃん目掛けて
落ちてきた。あ、危ない!?

「キャアッ!?」

茉莉華ちゃんは、恐怖で目をつぶる。
しかし茉莉華ちゃんに張りぼてが落ちる事はなかった。
何故なら睦月君が茉莉華ちゃんの前に立ち張りぼてを
押さえて庇ってくれたからだ。睦月君!?

すると睦月君は、押さえた状態で茉莉華ちゃんに
「……大丈夫?怪我してない?」と言ってきた。
ボー然とする茉莉華ちゃん。

「……カッコイイ……」

そう茉莉華ちゃんは、呟きだした。
えっ……?

「茉莉華ちゃん、睦月君。大丈夫!?」

慌てて駆け寄ってくる保母さん達。
しかし茉莉華ちゃんは、うっとりと睦月君に
近寄って行くじゃないか。