「はぁっ?何だと!?」
眉を寄せて怒る茉莉華ちゃんのパパに対して
睦月君は、ジロッと睨み返した。
その表情は、先生より怖かった。明らかに怒っている。
「何で俺が可哀想なんだ!?」
「そんなことも分からないの?
おじちゃん。頭がいいのに……分からないんだね」
すると睦月君は、クスッと笑った。
む、睦月君が笑った!?いや、どちらかというと
見下したような笑い方だけど……。
睦月君は、それを気にする事なく私を引っ張った。
「あ、あの……失礼します」
引っ張られるがままその場を後にした。
後でどうして、そんなことを言ったのかと尋ねたが
睦月君は、それ以上何も答えなかった。
その間に中川先生が捜しに来て睦月君をそのまま
連れて行ってしまった。結局理由が分からないままだ。
あれは、どういう意味だったのだろうか?
私は、考えながらホールに戻ることにした。
「遅いぞ?もう始まるぞ」
「す、すいません。混んでいたので並んでいました」
戻ると先生に叱られる。
しかし本当の事は、言えなかった。
ううん。言いたくなかった。先生も睦月君は、
何も悪い事をしている訳ではない。
そんな事を言って傷つけたくなかったからだ。
モヤモヤ考えていたらコツンと先生は、
頭を軽く小突いてきた。
「他人の目は、気にするな」
こちらを見ずにそう言ってきた。
えっ……?
もしかして今の話を聞いていたの?
「先生…まさか聞いていたのですか!?」
「シッ。始まるぞ」
先生にそう言われたので慌てて手で口を塞いだ。
もしそうなら…どう思ったのだろうか?
腹が立たなかったのだろうか?
そう考えていると電気が消えて真っ暗になり
ステージが明るくなる。すると
園長先生が挨拶をしてくれた。