「この際もっと強く抗議して徹底的に
幼稚園を変えさせてやらんとな。
まったく…だから低俗で馬鹿な人間は嫌いなんだ」

ちょっと…それは、あんまりだわ!?
そう思いながら見ていたら
後ろからグイッとスカートを引っ張られた。

「キャッ!?」

驚いて声が出てしまった。慌てて振り向くと
引っ張ってきたのは、睦月君だった。
心配して迎えに来てくれたのだろうか?

「あら、小野木さん。それに睦月君…」

ギクッと肩を震わせた。声を出したせいで
気づかれてしまったようだ。
どうしよう……気づかれちゃった。
慌てて振り返るとやっぱりこちらを見ていた。

「あの……おはようございます」

恐る恐る挨拶すると茉莉華ちゃんのパパは、
「誰だ?」と聞いてきた。

「茉莉華と同じ組の藤崎睦月君と
お父様の担当編集者・小野木涼花さんよ。あなた」

茉莉華ちゃんのママが代わりに紹介してくれた。

「藤崎睦月……?あぁ茉莉華を泣かした園児か」

すると茉莉華ちゃんのパパは、ジロッと
こちらを睨み付けてきた。ビクッと思わず動揺する。
でも、ビクついたらダメだわ。
睦月君は、別に悪いことをした訳ではないのだし
私は、負けじと頭を下げて自己紹介することにした。

「はい。クローバ社の小野木涼花です。
よろしくお願いします」

「なるほどな。いかにも躾が悪そうだ。
盗み聞きといい……担当がそれなら父親も
大した事がなさそうだな」

はい!?その言葉に目を丸くした。
今、先生も含めて睦月君を悪く言ってきたわよね!?
信じられないと思った。