「でもね。拓馬君。茉莉華ちゃんは、女の子なのよ?
あんまり酷い事を言ったら泣き出す事だってあるわ」

「はぁっ?それは、酷い事を言った場合だろ?
先生。今回のは、茉莉華が先に睦月の悪口を言って
勝手にヒステリー起こしたからじゃん。
俺ら何も悪くねぇーし。なぁ?睦月」

中川先生は、優しく注意するが拓馬君は、言い返し
睦月君に話しかける。しかし睦月君は、無言のままだった。
どうしたものか……。

私は、困りながらも睦月君を連れて自宅に帰った。
今日遭った事は、全て先生に話した。すると
「はぁっ?勝手にヒステリー起こして泣いた?
随分とワガママなガキだな」
何だか拓馬君と似た事を言ってきた。

「私もびっくりしちゃって注意が出来ませんでした。
すみませんでした」

申し訳なさそうに謝った。
ちなみに今は、キッチンでおやつを用意している最中だ。
先生は、ため息混じりにりんごジュースをコップに注いだ。

「別に謝らなくていい。ガキ同士の喧嘩だろ。
竜ヶ崎さんのところか…あそこの旦那は、
うるさいから、めんどくせーんだよな」

「先生は、旦那さんにお会いしたことは?」

「直接会った事は、まだ無い。
まぁ、めんどくせー奴だとは、聞いているが
奥さんの方は、品があるのにな。
雰囲気が少し沙織に似ているせいか」

先生は、そう呟いた。えっ……?
雰囲気が先生の奥さんに……似ている?
奥さんの顔を思い出してみる。
確かに……優しくて上品な感じが似ているかも
写真しか見たことはないけど
そう思ったら胸がズキッと痛みだした。
すると先生は、私の頭を軽く小突いてきた。

「余計な事を考えてるな。アホ」

そう言うと淹れたコーヒーとジュースとおやつを
睦月君が居るソファーに持って行ってしまう。

「あ、待って下さい。先生……」

慌てて先生の後ろを追いかけた。
私の変化に気づかれてしまった……。
何だか複雑だが嬉しくなった。すると先生は、
睦月君にプリンが乗せたお皿をテーブルに置きながら

「で?お前は、どう思ったんだ?睦月。
その茉莉華ちゃんだっけ?
ワガママだと思ったのか?」と尋ねた。