「はいはい。じゃあ、また明日。失礼します」

ペコッと頭を下げると拓馬君を連れて行ってしまった。
私も軽く頭を下げて見送った。すると先生は、
呆れたようにため息を吐いてきた。

「まったく。女ってそういう話好きだよな。
くだらねぇーどんな奴でも興味ねぇ」

「ですが、もし関係者以外立ち入り禁止とか
されたら大変でしたよ?
私、発表会に来れなくなる所でした」

良かった……奥さんが止めてくれて。
しかし先生は、ふんっと言うと黙って行ってしまった。
あ、行っちゃう!?
私は、慌てて睦月君を連れて先生を追いかけた。

しかしある事件が起きる。
それは、次の日に睦月君を迎えに行った時だった。
早めに行ったせいか丁度劇の練習をしている
真っ最中だった。あ、練習している。可愛い……。
王子様が白雪姫に会いに来て結ばれるシーンだった。

あら、白雪姫の女の子がとても可愛らしい。
雰囲気が竜ヶ崎さんの奥さんに似ているから
もしかして……娘さんかしら?
そして劇が終わると最後に全員で歌を歌っていた。

「そして王子様と白雪姫は、幸せに暮らしましたとさ
めでたし めでたし。はい、皆さん。
よく出来ました。上手でしたよ~」

中川先生は、皆を褒めていた。
どうやら終わったようだ。
すると睦月君が、こちらに気づき駆け寄ってくれた。

「睦月君迎えに来たよ。一緒に帰ろうね」

そう言うとコクリと頷きカバンと上着などを取りに
戻っていく。
私は、睦月君を見ていると拓馬君もこちらに来た。

「あ、おばちゃん。今日は、早いじゃん?」

「お姉ちゃんね。拓馬君。
うん。先生に頼まれ事をされてそのまま来たから」

注意しながら答えているとあの白雪姫役を演じていた
女の子がこちらに来た。戻ってきた睦月君に対して
「ねぇ、睦月君。あなたやる気ありますの?」と
言ってきた。

「えっ?」