先生は、睦月君の頭をポンッと撫でると
そのままキッチンに行ってしまった。
私がしゅんと落ち込んでいると睦月君が
「……パパ……セクハラだったね」と言ってきた。
あ…また、言ってきた!?
睦月君のセクハラ発言に驚かされるが
よくその言葉を知っていたわよね?
私は、不思議に思いもう一度聞いてみることにした。
「睦月君。どうしてパパがセクハラなの?
その言葉、誰から聞いたの?」
「……拓馬から聞いたの。
大人は、デリカシーないんだって」
そ、そうなの………!?
拓馬君がそう言ってきたの?
最近の幼稚園児は、何を話しているのか分からないわね。
睦月君の発言も最近の幼稚園の会話にも
驚かされることばかりだ。
そして、改めて衣装作りを再開させた。
しばらく縫って仮縫いまで終わるとミシンで
慎重に縫い続けた。
夕食を済ませた後もやり続け気づくと終電が
終わってしまっていた。
私は、不器用で遅いから
いつの間にか、そんな時間になってしまった。
どうしよう……。
「もうこのままやっちゃおうかしら?」
せっかくなら、このまま夜なべして
仕上げてしまうべきか。しかしその時だった。
先生がリビングに入ってきた。
「まだやっていたのか?」
「すみません。夢中でやっていたら
こんな時間に。このまま作業させて下さい」
申し訳なそうに言うとチラッと手元を見る先生。
「そのまま夜なべでもするつもりか?」
「は、はい。せっかくですし、このまま最後まで
仕上げます。出来るか心配ですが……」
えへへと笑うと呆れたようにため息を吐くと
キッチンに行ってしまった。
呆れられてしまったのかしら?
するとしばらくして先生は、コーヒーを淹れて戻ってきた。