「何だと……?」
眉を寄せる先生の表情は、一瞬で怖くなる。
あぁ、怒らしちゃう!?
私は、どうやって止めるべきかオロオロしていると
お母様がフフッと笑ってきた。
「そうね…睦月君の言う通りかも知れないわね」
えぇっ!?お母様まで……。
お母様の意外な言葉に驚いた。
「藤崎君は、怖いのよ。沙織を裏切る事になるのでは
ないかって……でもね。勘違いしないであげて?
あの子は、あなたや睦月君の幸せを誰よりも願っている。
それが違う女性になったとしても変わらずに。
沙織は、そういう優しい子だって
あなたが1番分かってるはずよ?」
お母様の言葉を聞いて言葉を無くす先生。
「もう沙織や私達の事で苦しまないで
あなたは、あなたの幸せのために
自由に生きてちょうだい。
それが、睦月君や沙織のためになるわ」
「俺は……」
その言葉は、優しくてあたたかった。
先生は、何か言いかけたがギュッと
拳を握り締めていた。先生は、葛藤している。
自分自身に……。
その後、先生は、ずっと黙ったままで
お父様にもう一度挨拶をしてホテルに帰った。
その間、まともな会話はなかった。
私は、その間。悶々と考え込んでいた。分かっている。
先生がどんな気持ちなのか。
奥さんのことを愛しているから苦しいんでいる。
だけどお母様の言葉を聞いて胸を打たれた。
睦月君やお父様だって…そう。
先生に前に進んでほしいのだ!
そして自分も同じ気持ち。
私も…前に進まないといけない。こんな中途半端な
気持ちでは先生は、振り向いてくれる訳がないのだ!
ホテルに着くと部屋に向かった。
その際に私は、一段決心をする。
部屋に戻ると私は、勇気を出して先生に想いをぶつけた。
「せ、先生。好きです!!」