えっ……!?
驚いてお母様を見た。すると申し訳なさそうにするも
クスッと微笑んでいた。

「藤崎君は、ずっと私達に出版した小説と
睦月君の成長姿を写した写真を送り続けてくれたわ。
主人は、読まんと言い続けていたけど私知ってるの。
必死に隠しているけど藤崎君が書いた小説を夢中で
読んでいたのよ!」

私も先生も驚いてしまう。
お父様は、先生の小説を読んでくれていた…!?

「フフッ…いつも小説の発売日前日に送ってくれるから
その日になるといつもそわそわしながら
郵便屋さんの来るのを待っていたぐらいなのよ。
睦月君の写真を持ち歩いてるのも知っているわ。
あの人は、変な所で頑固というか素直ではなくて
今回のことだって本当は、あの人から
言い出したことなのよ。でも、素直になれなくて……」

「そうだったのですか?」

私は、驚きを隠せなかった。
先生も驚いた表情をしていた。
奥さんのお母様は、睦月君の頭を撫でながら

「あの人は、すでにあなたを許しているわ。
ただ素直になれないだけ。今回だって報道を観ていた
主人は『何でアイツは…ずっと1人で居ようとするんだ?
沙織や我々の罪悪感や罪滅ぼしのつもりか?くだらん。
睦月のためにもさっさと再婚でもすればいいものを』

「そう言っていたわ。私はね…あれは、あなたへの
配慮だと思うの。口が悪いしあの性格だからそうには、
思えないかも知れないけど…きっと沙織や私達に
気にしないで自分の幸せを掴まえろと
言いたいのではないかしら?
それを伝えたくてあなた達を呼んだと思うの」

お母様は、先生そう言って教えてくれた。
それって……先生の事を許すだけではなくて
解放してあげようとしているってことだろうか?

ずっと奥さんを死なせてしまった罪悪感を
抱いている先生を救ってあげるためのお父様の優しさ……。

言葉を無くした先生は、凄く驚いた表情をした後
切ない表情する。あの時に見た今にも
泣きそうな表情だった。

「俺は、沙織を愛しています。
これからも……彼女以外を愛せる自信はありません。
今でもどうしたらいいか……分からない」

ズキッ…。
その言葉は、私の背中に重く乗しかかる。
奥様以外を愛せない先生は、一途で素敵なはずなのに
私には、泣きたくなるぐらい辛い言葉だった。
すると睦月君は、不思議そうに首を傾げた。

「自信…ないの?パパ。
この前も逃げちゃうし案外意気地無しだね?
素直になれないなんて
拓馬が聞いたらそう言われちゃいそうだね」

む、睦月君!?
先生相手に凄い事を言ってくる睦月君だった。