「ちょっと、梨子。そんな泊まらしてもらうだなんて
無理無理。こんな事を頼める訳が…」

「おい。何が泊まらしてもらうって?」

話している途中で先生が横から口を出してきた。
ギクッと驚いて肩を震わした。
さっきまでパソコンで小説を書いていたはずなのに
いつの間に終わらしていたのかしら?
私は、慌てて電話を切り後ろに隠した。

「い、いえ何でもありません。
き、き、気のせいです!」

「気のせいと言っている割りに思いっきり
ビビってるじゃねぇーか。いいから話してみろ。
それとも俺には、話せねぇーことか?」

ギロッと怒ったように私を見てきた。
ひぃぃっ……言わないと余計に機嫌が悪くなる。
私は、渋々事情を話した。泊まらしてもらうのは、
抜きで報道陣が自宅まで来ていて困っていると

「なんだお前も泊まって行くのではなかったのか?
違うなら早く言えよ……報道陣もあるし
そうだと思ってフロントに連絡してしまったじゃないか」

えぇっ?それって…ここに泊まってもいいってこと?
まさかの許可に私の方が驚いてしまった。
しかもすでに連絡済みだなんて……いつの間に?

「あの…泊まってもいいのですか?」

でもそれって先生と一緒の部屋で泊まるってことよね?
えぇっ…!?
考えるほど頭の中がパニックになる。

「おい。一応勘違いされたくないから言うが
変な意味はないからな?睦月も一緒に居るんだ。
それを忘れるなよ?」

「もちろんです。分かってます!」

慌てて否定する。でもこれって、断るべき?
だけどこんな経験なんて頼んで出来るものではないし
しかも憧れの先生と一緒なのだ。
申し訳ないと思うが泊まりたいと思った。
すると睦月君が服をツンツンと引っ張ってきた。
どうしたのかな?と見てみると睦月君は、
バスタオルを見せてきた。えっ…バスタオル?

意味が分からずきょとんとしていると先生が
「お前と一緒にお風呂に入りたいんだと…」
そう言って教えてくれた。
睦月君を見るとコクリと頷いている。