「じゃあ……今のところ。両思いなのは、
僕とお姉ちゃんだけだね。
お兄ちゃんは、ただお姉ちゃんに片思い中。
良かったね?お兄ちゃんファンのお姉ちゃん達」

ハッキリとした口調でそう言ってきた。
えっ……?
ハッと気づくと周りは、人だかりになっていた。
報道陣もこちらにカメラを回していた。
すっかりと忘れていた……私達。
報道陣に囲まれていたことに……。

「おい、おい。これは、どういうことだ!?
大スクープじゃないか!!
あの一般男性は、誰だ?あの男の子も」

そう言いながら報道陣は、パシャッパシャとカメラの
フラッシャを浴びせながら撮ってきた。
どうしよう。何だかさらに注目の的になってしまった。
すると先生が「小野木。来い。逃げるぞ!」と言い
私に手を差し出してきた。

「で、でも……」

まだ胸がズキズキと痛む。
ショックを引きずっていた。

「いいから来い!!」

先生は、強引に私の腕を引っ張り肩に手をやると
走り出した。えぇっ!?
私は、睦月君を抱っこしながら一緒に走り出した。
報道陣に追いかけられるが何とか逃げ切る。
少し離れた場所に停めてあった駐車場まで
逃げ込むと慌てて車を発進させた。
お互いに息が上がりぐったりとしていた。

「ここまでこれば、大丈夫だろう。
まったく……何やっているんだ?お前は……」

「……すみませんでした」

先生は、呆れながらも怒り出した。
私は、それに対して涙をポロポロと流しながら謝った。 
迷惑をかけたい訳ではなかった。すると
私が抱っこしていた睦月君が

「お姉ちゃんが……悪い訳ではないよ。
パパが……ハッキリしないからでしょ?」

苦しそうにしながらも私を庇ってくれた。
苦しそう……?よく見ると顔が赤い。
まさかと思い抱き直すとおでこを触ってみた。
嘘っ……熱い!!
どうしよう。さっきまで平気そうだったのに。

「せ、先生。大変です!!
睦月君。熱がありますよ……しかもかなり高い」

「慌てるな。ったく……いつも以上に喋ったから
ストレスで熱を出したんだ。そのまま家に連れて行く。解熱剤を入れて寝かせておけば、明日にも
元気になっているから心配するな」