神野飛鳥は、心配そう言ってきた。
そんなことは、最初から分かっている。
だけど私は、先生か好き……。
するとその時だった。
抱っこしていたはずの睦月君が彼の腕をつねった。

「痛っ……」

「睦月君!?ダメよ……そんなことしたら」

まさか、睦月君が神野飛鳥の腕をつねるとは、
思わず驚いてしまった。慌てて止める。
しかし睦月君は、神野飛鳥に対して
「女性が嫌がっているのに……しつこく
迫る男は、嫌われちゃうよ?お兄ちゃん」と
平然とそう言ってきたのだ。

「なんだ……この子?それより俺は、
別にしつこく迫ってないよ。
ちゃんとアプローチをしているだけだ!」

「……じいしき……かじょう」

「はぁっ?」

それは、自意識過剰と言いたいのかしら?
思わない難しい単語に私も驚いてしまった。
しかし睦月君は、表情を変えない。

「相手の気持ちを考えずにひたすら
自分がアプローチすれば、落ちると思っているのは、
自意識過剰って言うんでしょ?
この前……拓馬が教えてくれたの。お兄ちゃん
少しでもお姉ちゃんの気持ちを考えたことある?」

拓馬君が教えてくれたって……睦月君。
幼稚園で普段どんな会話をしているのかしら?
拓馬君も拓馬君で相変わらず発言が達者だ。

「はぁっ?そんなの……考えているに決まっている。
俺達は、両思いだ!!」

そう断言する神野飛鳥。えぇっ!?
私……そんなこと思っていない。やめて
またさらに変な誤解を生むだけだから……。
すると睦月君は、私の方を見てきた。

「僕ね……お姉ちゃんのこと好きだよ。
お姉ちゃんは、僕のこと好き?」

何故だかこちらも私に告白してきた。
睦月君……!?
好きって……それは、もちろんだけど。