今回は、失敗したけど何とか貰う予定の原稿が渡せた。
コツさえ、上手く覚えれば……。
次は、失敗せずに成功させてみせる。
そう意気込みながら翌日、先生の自宅に向かった。
次の連載の打ち合わせと編集長に頼まれた件がある。
先生……受け入れてくれるだろうか?
インターホンを鳴らし呼び出すと先生が開けてくれた。
ただし若干嫌そうに眉間にシワが寄っていた。
そんな嫌な顔をしなくても……。
「今日は、何だ?
お前の所の原稿なら昨日渡しただろ」
「今日は、次回作の打ち合わせと
先生にお願いがありまして」
「断る」
口に出す前にキッパリと否定された。
えぇっ?まだ何も言っていませんけど!?
せめて話だけでも聞いて下さいよ……。
「断るって、まだ何も伝えてませんよ!?」
「どーせ。原稿を余分に書けだの
取材目的のどっちかだろーが?
だったらなおさらやる気はないぞ」
ギクッと肩が震えた。何故分かったの!?
編集長に頼まれたのは、我が社で
先日発売する予定の書籍本のサイン会だった。
ちなみに先生は、一度もサイン会をした経歴はない。
「ど、どうしてですか!?蓮見先生がサイン会を開けば、
たくさんのファンの方が来てくれますよ?
若い女性にも人気が出ると思いますし」
これだけの美形と凄い作家なのだから
やらないなんて勿体ない。
きっとやれば盛大に盛り上がること間違いないのに。
「俺は、別に顔で小説を売ってる訳ではない。
そんな事をしなくても売れる作品を書いているつもりだし
むしろ、そんなもんで来る客の方が迷惑だ!」
不機嫌そうに言われてしまった。うっ……。
確かに顔で売らなくても先生の作品は、未だに人気だ。
しかし最近では、本が売れなくなった時代だと
言われている訳だし新たな戦略も必要だろう。
作家は、いつ売れなくなるか分からない……。
「ですが……」
「そんな事より今、違う出版社の作品で手が離せない。
お前は、俺の代わりに睦月を迎えに行って来い。
いいか?くれぐれもちゃんと迎えに行って来い。
話は、その後だ」