綺麗な桜が満開に咲く季節。
私、小野木涼花(おのぎりょうか)
大手の出版社・クローバー社に勤めて
早2年経とうとしていた。

本が読むのが好きで編集者になりたくて
あちらこちらの出版社に面接もした。
昔から要領が悪くドジな性格のため、やっとの思いで
就職してもその性格が災いして1年で
担当から外されてしまう。

落ち込む毎日。
するとたまたま親切に指導してくれていた
先輩・河合さんが別の部署に異動する事になり
今まで担当していた編集の仕事を私に譲ってくれた。

「ありがとうございます。河合先輩」

「いやいや。小野木なら
この担当を任せられると思ったからだよ。
しっかりな?」

河合先輩は、笑顔で言ってくれた。
いつも優しく面倒みのいい河合先輩。
こんな私でも根気よく教えてくれたのに
異動だなんて寂しい気もするけど、せっかく
譲ってくれた担当だ。精一杯頑張りたい。

「もし、何かあったらいつでも相談に乗るから
それとちゃんと心得を忘れるなよ!」

「は、はい。」

編集者の心得。
①まず担当の小説家の書きやすい環境作りを心がける。
②出来る限りのサポート。
無闇に小説家を不安にさせたり怒らせないこと
などなどがある。
どれも一般的だが、それを守るのは意外と難しい。

「いいか?小説家の中には、穏やかな人が居れば
気難しい人や神経質な人も居るからな。
ちなみにお前が今日から担当する小説家は、
どちらかといえば神経質で気難しい方だ!」

えっ!?神経質で気難しい……。
想像するだけでも不安しか残らない。
前の担当した小説家は、かなり気難しい人だった。
何度も怒鳴られ何回泣いたか分からない。

「まぁ、神経質と言ってもただうるさいのが
嫌いなだけだ。 根は、優しく面倒みがいい人だし
慣れれば問題ないから」

そう言ってくれるが本当に…?
河合先輩ぐらいの温厚な人なら問題ないのだけど
いや。そんな人は、なかなか居ないだろうし。

「あ、でも、多少慣れるまで大変かもしれないけどね。
なんせ親子揃ってある意味凄いから」