涼太君のお兄さんは、皆いい子達と言ってくれたが
どう見ても怖い。不良かな?
180cm以上ありそうな背だから迫力もある。
私を見るなりギロッと睨み付けられた。
ひぃぃっ……席替えしてほしい。
私は、思わず震え上がった。やっぱり怖いよ……。

「じゃあ出席番号を言います。足立紗由。
伊藤真奈美」

しかし、そんなことは、気にせずに出席番号順に
名前を呼んでいくお兄さん。
しばらくすると「村瀬歩斗(むらせあゆと)」と
呼ばれて隣の男子が返事をした。
この男性は、村瀬君と言うらしい。
ちゃんと返事をするとは、意外だ。だがやっぱり
ドキドキしてしまう。

出席番号が言い終わると授業が始まる。
この村瀬君は、真面目に授業を聞いてノートに
写していた。不良かと思ったが違うようだ。
だが戸惑う私を睨み付けてくる……何で?
もしかして何か気に障ることでもしたかな?
俺の隣に座るなとか……ブスでガッカリしたとか。
こういう時にネガティブ思考が出てしまう。

頭の中は、悪いことばかり考えてしまい
授業どころではなかった。
結局。理由が分からないまま授業が続き
お昼休みになってしまった。すると村瀬君は、
席を立ち上がりクラスから出て行ってしまった。
ホッとするような出ていくほど我慢ならなかったのか
理由が分からずにオドオドしてしまった。
そうしたら数人の女の子達が私のところに来た。

「松嶋さん。お昼一緒に食べない?」

「東京のこと詳しく聞きたい。どの辺に住んでたの?
芸能人とか会ったことある?」

私に興味を示してくれたってよりも
東京や芸能人に会えるかどうかに興味を示していた。
それでも声をかけてもらえるのは嬉しかった。
私は、一緒に食べることにした。

机を寄せてお弁当を広げる。
皆小さなお弁当に綺麗に盛り付けられ
可愛いお弁当ばかりだ。私は、祖母の手作りのため
少し茶色が中心。だが卵焼きやウインナーが
入っていたりと工夫してくれている。
逆に申し訳ないので今度は、手伝いと思った。

「そういえばさ。菜乃ちゃんって呼んでもいい?
菜乃ちゃんって小林先生と知り合いなんだね?
弟君の知り合いとかでさ」

「いいなぁ~小林先生マジでカッコいいもん」

「紗耶香は、小林先生好きだもんね」

涼太君のお兄さんと知り合いだということを
羨ましがるクラスメート達。
確かに。あんなイケメンで優しい担任の先生と
プライベートで知り合いなら羨ましくもなるだろう。
しかし、こういう話は苦手だ。