両親は、嘘をついた。てっきり賛成してくれたと思ったら
それは、私が反対しても言うことを聞かないと思って
連れ戻すために言ったことだった。
何で?岐阜に行けたから私は、明るくなれた。
外に出てバイトまでやれるようになったのに……。
酷いよ……お母さん。
「お祖母ちゃんは、私のしたいようにしてもいいって
言ってくれたもん。バイトだって
またやってもいいって言ってくれたし」
「お祖母ちゃんも年なのよ?そんな甘えて
ワガママばかり言ってどうするの。
それにお店の方には、感謝しているけど……あなた。
車椅子の男の子と仲がいいみたいだし……」
何だか言葉を濁す母。お祖母ちゃんから聞いたのだろう。
その表情から見て母は、翔馬君と付き合うのを
反対していることが分かった。
私は、それを察するとショックを受けた。
何で……障がい者だから?
凄く素敵で……他の男の子よりもいい人なのに。
「あなたが心配なのよ……。
菜乃は、まだ世間知らずだし、未成年よ?
親の私達のそばに居た方が安全なのよ。
だから……あくまでも遊びに行く程度にしなさい」
「お母さんの嘘つき!!私は、翔馬君が好きなの。
それに私が外に出れてバイト出来るようになったのも
全部岐阜に行ったからじゃない!?私は、絶対に戻るから」
私は、泣きながら叫ぶとそのまま自分の部屋に
引きこもった。ベッドの上に寝そべると
声を殺して泣いた。
お母さんのバカ。嘘つき……。大嫌い。
何で?反対するのよ……翔馬君を。
会えないと分かるとなおさら会いたくなった。
涙を拭きながらカバンからスマホを出した。
すでにメールが来ていた。翔馬君から
東京に着いたか?と書かれていた。
真実のことを話そうとするが指が止まる。
帰りを凄く楽しみにしてくれていた。
帰れなくなったとか、交際を反対されてるとか
それを翔馬君には、伝えることが出来なかった。
傷つけるから……。
「……ごめん……翔馬く……ん」
私は、大声を出して泣いた。
神様は、意地悪だ。何で純粋に好きで
大切にしたことを奪うのだろう。
何で……私に酷い仕打ちをするのだろう。
泣いて、泣いて私は、また元の生活に戻った。
学校に行く訳でもない。外に出る訳でもない。
また不登校に逆戻りだ。まるで全てが幻のように……。
何日が過ぎたか分からない。
ベッドから起きて近くにあった目覚まし時計を見る。
時間は、10時過ぎていた。
今日は、平日だからすでに学校が始まっている時間帯だ。