「亜美。いい加減にしろ!!」
翔馬君は、私の代わりにさらに怒ってくれたが
それが亜美ちゃんにムカついたのか
「もういい!!」と言い車椅子を押して向こうに行ってしまった。
慌てて追いかける亜美ちゃんのお母さん。
涼太君とお兄さんも心配で後を追いかけて行く。
取り残された翔馬君と私。
言葉にならずに黙り込んでいた……。
その後は、お互いに何だか気まずくなってしまった。
翔馬君のお母さんに迎えに来てもらうが一言も話さないまま。
翔馬君も改めて気づいたのかもしれない。
私が東京に帰らないといけないことに……。
祖母の自宅に着くとお礼を言い翔馬君は、
車で帰って行った。私は、遠くになって行く車を
見送りながら涙が溢れていた。
デート自体は、凄く楽しかったはずなのに
何だか切ない気持ちのままで押し潰されそうだった。
涙を必死に引っ込めると祖母に心配かけまいと
明るく玄関のドアを開けて中に入って行く。
「ただいま~」といつもより大きな声で言うと
祖母は、電話をしている最中だった。
そして私に気づくと受話器を耳から外した。
「あら、お帰りなさい。丁度いいところに。
菜乃ちゃん。お母さんから電話よ!」
「えっ?お母さんから?」
祖母の電話の相手は、母だった。
もしかしたら様子を聞きに電話をしてきたのか?
それとも……何だか嫌な予感がした。
私は、恐る恐る祖母から受話器を受け取ると耳につけた。
「お母さん……私」
『あ、菜乃?良かったじゃない。
あなたバイトも出来るようになったし、前より
明るくなったってお祖母ちゃんから聞いたわよ。
これなら夏休みが終わっても大丈夫そうね。
学校にも行けるように先生に話しておくわね』
そう嬉しそうに話す母。
あぁ、やっぱり……嫌な予感が的中した。
一気に現実に連れ戻される。楽しかったのは、
夢物語だったと……。
夏休みが終われば……私は、東京に帰らないとならない。
また学校にも行けだと言われ……出来ないなら
不登校に戻るだけだ。
行きたくない……帰りたくない。
私は、心の中で何度もそう思った。