「だって涼太がうるさいし。それにいいじゃない。
皆と回れば……」
いや……そういう問題ではない。
どうしよう……翔馬君とデートしていたのに。
ハッキリ嫌だと言えない私は、どうしたらいいか
戸惑ってしまった。このままだとデートが……。
「ねぇ、いいでしょ?翔馬」
平気で翔馬君にねだる亜美ちゃんって子。
そんなぁ……嫌だよ!
私は、オロオロしながら翔馬君を見ると翔馬君は、
ため息を吐いていた。
「悪い、亜美。俺……菜乃とデートしている最中だから
パス。そんなこと言わずに涼太と仲良く回れよ。なぁ?」
苦笑いしながら断ってくれた。
私のために断ってくれた。翔馬君……。
私のために断ってくれたのが嬉しかった……。
しかし亜美ちゃんは、それが納得出来ないのか
ムスッと表情を変えた。
「な、何よ……それ?翔馬は、私より
その内に帰るこの女がいいって言うの!?
夏休みが過ぎたらどーせ居なくなるくせに」
えっ……?
亜美ちゃんって子は、とんでもないことを口に出してきた。
周りは、シーンと静まり返る。
た、確かに……私は、夏休みまでお祖母ちゃんの自宅に
遊びに来ている。
それは、間違いのない真実だ。でも……東京に戻ったって
そう思おうとしたが……あれ?
そうなると翔馬君と離れ離れになってしまう。
毎日が楽し過ぎてすっかり忘れていた。
夏休みが過ぎたら私は、東京に帰らないとならない。
現実に連れ戻された気分だった。
「亜美……お前なぁ……」
「だってそうじゃない!?夏休みだけなのに
何で、その子がいいの?居なくなったらどーせ
向こうの方が良くなって翔馬のことなんて
どうでもよくなっているわよ!!」
翔馬君は、怒ろうとするが亜美ちゃんは、
それでも言い返してきた。
そんなことない……私は、翔馬君をどうでもよくなんて
ならない。そう思うのに上手く言葉が出てこない。
違うのに……東京に帰らないとならない事実に私は、
ショックの方が大きかった。