席に着く前に私達は、売店に寄った。
私は、チョコキャラメルのポップコーンと
カルピスメロンソーダを買った。
翔馬君は、同じポップコーンとコーラを購入。
席に着くと振り返る。すると翔馬君と目が合った。

「これは、これで不思議な感じだな。
菜乃。チラチラと後ろばかり振り向くなよ~」

からかうように私に言ってきた。どういう意味よ!?
もう……と頬を膨らませるとアハハッと笑う翔馬君。
でも私が寂しいと思ってからかうようにするのは、
翔馬君の優しさからだろう。

私は、イーと言いながら前を向き直した。
しばらくして人が揃い始めると映画の予告が始まる。
そして辺りが暗くなると上演時間だ。
チョコキャラメルコーンを食べながら観ていたのだが
途中で感動してしまった。

この映画は、記憶を無くす病気を持った少女は、
1人の男の子と仲良くなる。
でも記憶が続かない少女は、その彼を忘れてしまい……。
切なさと胸キュンなストーリーだった。

途中で涙が溢れてきた。ハンカチで涙を拭いていると
後ろから鼻をすする音がした。えっ……?
振り向くと翔馬君は、涙目になって泣くのを我慢していた。
あっ……泣いている。

男の子が映画で泣きそうになっているのは、
始めてみた。そっちばかり気を取られていると
翔馬君が私に気づいてしまった。

翔馬君は、ハッと思ったのか右手で
シッシッと追い払ってきた。
照れている、照れている……。
私は、クスクスと笑いながら前を向いた。
それでも後ろばかり気になるものだから
後半は、映画の中身が頭に入らなかった。

「もう、菜乃。後ろばかり気にしてさ
お陰で俺まで気になって半分しか集中して観れなかったし……」

「だって~」

映画が終わると私と翔馬君は、1階に下りた。
どうやら私が翔馬君ばかり見ていたから
同じように集中が出来なかったようだ。
それがまた可笑しくてクスクスと笑っていた。

笑っていたら目的地に着いた。
フードコートになっているのだがテラス風になっていて
真ん中に演奏スペースがあり他にちょっとした本棚も
設置していた。

翔馬君の話だと3階にもフードコートがあるのだが
3階は、ご飯中心になっていて
1階は、スイーツ中心の飲食店が多いとか。
確かに。ドーナツやシュークリームの専門店などがある。
あ、食べたかったパンケーキのお店もあるわ!!