「あ、なんだ。同い年じゃん。
なら別にタメ口でいいよ……翔馬でいいし。
俺も菜乃って呼ぶし」
「えっ……あ、はい」
急に呼び捨てにされたのには驚いたが
私と違いコミュ力が高いようだった。
それに明るく気さくに話しかけてくれるので
嫌な気持ちにはならなかった。
何だか不思議な人だなぁ……。
彼……翔馬君の叔父さんが経営しているケーキ屋は、
柳ケ瀬からJR岐阜駅の通りにある
一軒のお店でドアといくつかの窓に可愛らしい
飾りつけがしてあった。
中で食べることも出来るらしい。
店内に入るとキャンディーやクッキーの形に
顔が描いてあり飾りつけがとても可愛らしい。
そしてスイーツの甘い香りがして
ピアノの心地いい音色が流れていた。
「美紀子おばちゃん。この子が怪我したらしいから
絆創膏欲しいんだけど」
「あら。それは大変。ちょっと待って……翔馬君。
悪いけど、これ包むのやってくれる?
レジは、済ませてあるから」
「へーい」
中年ぐらいのおばさんとやり取りをする翔馬君。
このお店の人は、叔父さんの奥さんだろうか?
包むってことは翔馬君は、お手伝いを日頃から
やっているのだろうか?車椅子なのに?
「菜乃。悪いけど、そこの席で待ってて。
俺、手伝いをしないといけないから」
「あ、う、うん。分かった」
慣れないタメ口で返事した。
チラッと見ると少ないがテーブル席があった。
私は、奥の席に座ることにした。
ここの席は、ショーケースの裏側が見える。
翔馬君は、奥から戻るとエプロンをつけた。
そして消毒液を手につけると車椅子に合わせた
テーブルのところでケーキを箱に入れ始めた。
手慣れたように次から次へと箱に入れる。
そして蓋を閉めるとシールで貼り付けていた。
「お待たせしました」
「ありがとう。翔馬君」