「あ、別に菜乃ちゃんのことを悪く思っている訳では
ないのよ?可愛らしくていい子だと聞いているし。
でもね……もうあの子を傷つけたくないのよ。
もう十分に傷ついたから……これ以上はね……」
言いにくそうに話す翔馬君の母親を見て
言いたいことは分かった。
母親として翔馬君を守りたいのだろう。
それは、当然だろう。
誰だって自分の子が傷つくのを見たくない。
でも……私は、そんなつもりはない。
ないけど……ハッキリと大丈夫だと言えるほどの
自分に自信はなかった。
翔馬君は、大好きだけど、傷つけずに守ることが
私には、出来るのだろうか?分からない……。
結局何も言えないまま私は、ショコラのお店に戻った。
「お帰りなさい。どうだった?
あら……何かあったの?」
「……美紀子さん……」
美紀子さんは、酷く落ち込んでいる私に
気づいて聞いてきた。美紀子さんを見たら
我慢していた涙が溢れてきた。
自分でもどうしたらいいか分からなくて
ただ泣くことしか出来なかった。
美紀子さんは、泣いている私をテーブル席に座らせ
ホットミルクを淹れてくれた。
「はい。これを飲んだら落ち着くはずよ」
「ありがとうございます」
あたたかいホットミルクを飲んだら
少し落ち着いてきた。
ちょっとメイプルシロップが入っており甘くてホッとする味だ。
「どうしたの?何かあった?」
「実は……」
私は、理由を話した。
翔馬君の母親が言ったことを……全て。
すると美紀子さんは、深いため息を吐いていた。
「そう……そんなことがあったの。仕方がないのよね。
翔馬君が事故に遭った時の2人共。
本当に絶望的な状態だったから……どうしても
神経質になっちゃうのよ」
「……分かってます。でも
私は、ただそばに居たかっただけで……」