チラッと翔馬君を見た。汗をかいており
ぐったりしていた。頬も赤く息遣いも荒い。
高熱を出したと言っていたし
まだ熱が高いのかもしれないと思った。
私は、どうしたらいいか悩んだ。
本当は、来てほしくなかったのかもしれないし
帰った方がいいのか?
そう考えると下を向いて落ち込んでしまった。
「あの……ごめんね。
私が……その……お見舞いに来て。帰るね」
「ち……違う。最悪って言ったのは、
菜乃に対してではなくてカッコ悪いところばかり
見せてる俺自身に言ったんだ!」
翔馬君が苦しそうに息を吐きながら
そう言ってきた。えっ?そうなの?
私は、顔を上げて翔馬君を見た。すると
息遣いを荒くしながら私の方を真っ直ぐ見てくれた。
「えっ?そうなの……?」
「そうだろ……試合だけではなくこんな状態だぜ?
カッコ悪いにも程があるだろ」
ハァッ……とまたため息を吐いていた。
その姿も苦しそうだった。翔馬君……。
普段は、明るくて前向きな姿が多いけど
こんな姿もあるんだ。きっといっぱい無理もしているのだろう。
周りを明るくするために……。
胸がギュッと締め付けられそうだった。
何も出来ない自分が苦しい。
どうにかして元気になってほしいと思った。
ソッと翔馬君の髪に触れた。汗で濡れている短い髪。
私は、恐る恐るだが優しく撫でた。
「……菜乃?」
「私は、カッコ悪い翔馬君も好きだよ?
私と同じなんだって……翔馬君も
頑張って乗り越えようとしているのだって
分かったから良かった」
自分でも何を言っているのだろうと思う。
良かったって……。翔馬君にとったら悔しかったのに。
でもね……凄すぎて翔馬君達は、何処か別の
特別なんかだと思う自分もいた。私と違うのだって……。
だけど違った。翔馬君達は、特別ではない。
たくさん苦しんで、落ち込んで
それでも前を向こうとしていたんだね?
私と同じ気持ちだったんだね。
「菜乃……」
「私ね。翔馬君の明るくて優しいところも
カッコ悪くても……悔しがっていても
どんな翔馬君でも大好きだよ!
それでも凄くカッコいいよ……」