岐阜エレファントは、準優勝だった。
周りは、拍手と労いの言葉をかける。
涼太君は、悔しそうに涙を流していた。
翔馬君は、複雑そうに暗い表情をしていた。

その姿を見た時は、言葉が出なかった。
閉会式が終わり翔馬君は、私達のところに来ると
翔馬君の叔父さんは、

「お疲れさん。惜しかったな。
でもよく頑張った」

労いの言葉をかけた。すると翔馬君は、
アハハッと笑っていた。
何も気にしていないような明るさで。

「本当……すげぇ残念だったわ。
もう少しで優勝が出来ると思ったのにな。
菜乃。悪かったな。カッコいいことを言っておきながら
結局負けちゃって……」

翔馬君……。

「ううん。凄くカッコ良かったよ!
私……車椅子バスケとかよく知らなかったけど
感動しちゃった。凄く勇気を貰えたからいいの」

これは、嘘ではない。
実際に凄く感動したし驚かされることばかりだった。
車椅子バスケを身近で見て迫力とテクニックに
驚かされた。凄いと思った。
これは、身近ではないと味わえないことだ。

それに翔馬君や涼太君。他の選手達の障害や
過酷な運命にも前向きに立ち向かう姿は、
素直にカッコいいと思う。私に勇気を教えてもらった。
だから……優勝が出来なくてもいい。

「そっか……それなら良かった。
でも次の大会には、絶対に優勝するからさ
菜乃に優勝した姿を見せたいし」

「うん……楽しみにしているね」

翔馬君は、無理に笑っているのだと思う。
私は、涙が溢れながらもニコッと笑って見せた。
我慢だ……翔馬君のためにも。
泣いたらきっと罪悪感を抱くだろうから……。

そして大会が終わったので翔馬君は、
自分の両親の車で帰って行った。
私は、行きと同じで美紀子さん達の車に乗せてもらう。

「惜しかったわよね……本当に」

「はい……でもとても素敵な試合でした」