涼太君は、ボールを受け取ると車椅子を器用に
動かしてそのままリングに向かって行く。
よし……このまま。
だが、敵が奪い返そうとしてきた。
「涼太!」
翔馬君が大きな声で叫んだ。
すぐな反応して涼太君は、翔馬君にボールを投げた。
翔馬君は、ボールを受け取るとリングの方に向き直し
その体勢のまま思いっきり高く飛ぶようにシュートした。
いくらなんでも無理だよ……!?
だがボールは、高さをキープしたまま
リングに向かって行く。
そしてリングに当たるとくるりと回りながら中に入った。
は、入った……!?
岐阜6-8名古屋。嘘っ……凄い!!
あの距離からシュートを決めた翔馬君に
私は、驚かされた。
「いいわよ~翔馬君」
「そのまま次も決めろ!!」
美紀子さん達は、大きな声を出して声援を送っていた。
わ、私も……。
自分も声援を送ろうと構えるとした時、翔馬君は、
メンバーと喜びながらこちらに振り向いた。
すると私と目が合った。
翔馬君は、ニカッと笑顔を見せると
こちらに向けてピースサインをしてくれた。
翔馬君……。
心臓がドキドキして鼓動が激しくなる。
嬉しかった……私に気づいてくれたから
「翔馬くーん。頑張って!!」
私は、精一杯の声援を送った。
恥ずかしかったけど伝わってほしかったから。
大きな声で叫ぶと翔馬君は、さらに笑顔を見せてくれた。
その笑顔に私は、カッコいいと思えた。
キラキラして眩しいぐらいだ。
そして試合は、2クオーター.3クオーターと続いた。
お互いに全力でぶつかり合った。
しかし惜しくも優勝は、逃してしまった。
試合は、完璧だと思えたのに……。
「仕方がないわよ。名古屋のチームは、
優勝経験のある実力者ばかりだったのだもの。
あの選手なんかは、パラリンピックの選抜選手に
選ばれたことがあるのよ」
美紀子さんの言葉にショックを受ける。
だからあんなに強かったのかと……。
翔馬君も涼太君もけして弱かった訳ではない。
それ以上に強い選手が居ただけのこと。
でも正直悔しいと思った。翔馬君に勝ってほしかった……。