翔馬君は、ボールを確認すると
すぐさま車椅子を押して走り出した。
そして構えてシュート。見事に点数が入った。
「キャアッ……やった……」
私は、嬉しくて声に出してしまった。
ハッと周りが居ることに恥ずかしくなったが
周りの観客も気にすることなく盛り上がっていた。
「よし、いいぞ!涼太、翔馬君」
涼太君のお兄さんも嬉しそうにはしゃぎながら
ガッツポーズをしていた。
その姿にフフッと可笑しくなりながら翔馬君を見ると
笑顔で涼太君やメンバーとハイタッチをしていた。
いいなぁ……私もしてみたい。
その笑顔は、キラキラしていて
心の底から楽しんでいるのが分かった。
好きなんだろうなぁ……バスケが。
私は、バスケとかよく分からないけど
彼が楽しんでいるバスケの姿を見ていたら羨ましくなった。
眩しくて夢に向かう翔馬君。車椅子になっても
その夢は、輝き続けていた。私もあんな風になりたい。
大変な困難も乗り越える勇気も
立ち向かう度胸も必要なんだと改めて思った。
次も翔馬君達が有利に動いていた。
しかし敵の長野のチームも負けてはいない。
体格のいい選手を中心に攻めてきた。
翔馬君は、涼太君や他の仲間の選手と共に
全力でぶつかって行く。
そして長野チームから勝ち取った!!
長野は、負けてしまったが凄いチームだったのは、
確かだった。
「やったわ。菜乃ちゃん。まずは、一勝よ!!」
「は、はい。」
喜ぶ美紀子さんを見ていて私も嬉しくなった。
そのまま勝ち進むと決勝では、
優勝候補の名古屋チーム『名古屋ジャパン』と
対戦することになった。
迫力からも優勝を狙っているのが分かる。
強そうな選手がたくさん居た。
試合が始まると実力を発揮する名古屋チームに
圧倒される翔馬君達。点数を入れられてしまった。
岐阜3-8名古屋。
名古屋チームが優先になってしまう。
私は、それをハラハラしながら見ていた。
大丈夫かなぁ……翔馬君。
私との約束のために勝つと言ってくれた。
自分も勝ってほしいと願った。
すると、その時だった。
敵が持っていたボールを翔馬君が弾き返した。
ボールは、バウンドした。
それを仲間の1人が拾うとすぐに涼太君に向かって投げた。