「だって腹が減ってるし」

「まったく……すみません。
弟がいつも迷惑をおかけしまして」

涼太君のお兄さんは、ため息混じりに美紀子さんに
代わりに謝っていた。
こちらは、物腰の柔らかい感じだ。
いいなぁ~お兄さん。私は、一人っ子だし。
ちょっと羨ましくなった。

「あら、いいわよ。
せっかくだし……圭一君は、何がいい?」

「す、すみません……じゃあ俺は。
コーヒーを下さい」

申し訳そうに謝ると私達の居る席に座った。
イケメンの年上のお兄さんが座るから
私は、内心ドキドキしていた。
こんなところを真由香に見られたら絶対に
睨まれていたよ……。

「兄貴も食べれば?」

「俺、後でいいよ。それよりも早く食べてしまえ。
席を占領したら迷惑になるから」

涼太君がお兄さんに食べればと言うと呆れながら
ため息を吐いていた。
するとそのお兄さんは、私に気づいた。

「君は……見ない子だね?」

「兄貴。その子は、菜乃って名前で翔馬の彼女だぜ」

か、彼女!?
平然と伝える涼太君に驚いてしまった。
違う……そんな恐れ多い。

「涼太。だから違うって。
奈乃は、バイトの子だって言ってるじゃん」

「そうだけ?」

耳まで赤くしながら怒っている翔馬君と違って
涼太君は、ニヤニヤと笑っていた。何だ。
ただからかっていたのか……でも驚いてしまった。
バイトの子か……。確かにそうなのだが。
ハッキリと言われると複雑な気持ちになった。