「ありがとう。ほら、沙綾ちゃん。
ケーキを買ったからお家で食べようね」
「わぁ~ケーキ。さぁ~ちゃんクマさんのケーキ好き~」
小さな女の子にそのケーキが入った箱を見せると
キャッキャッと大しゃぎしながら
ぴょんぴょんと跳ねて喜んでいた。可愛い……。
手を繋いで帰っていく親子連れを見送るが
何だか微笑ましくて嬉しくなった。
自分でも出来た……接客が。
すると次は、私と同じぐらいの女子高生が
店内に入ってきた。あ、女子高生だ……。
見ると心臓がドキッと高鳴って震えてしまった。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」
美紀子さんが接客するが私は、内心ドキドキしていた。
苦手意識というやつだろうか。
イジメのことを思い出してしまった。
地方も違うし気にする必要もないのに
もしかしなら私のこと変に見られてないか
悪口を言われたら……と良くないことばかり
考えてしまう。怖くて仕方がなかった。
「じゃあ、菜乃ちゃん。あのお客様に
お冷やとおしぼりを持って行ってくれる?」
「あ、はい。」
ど、どうしよう。緊張しちゃう……。
おしぼりとお冷やを持って女子高生のところに
向かった。女子高生の2人は、私を気にすることなく
スマホを見せ合って話をしてしていた。
だ、大丈夫よ。今だって私のことなんて見ていない。
そう思うのだが頭の中では、ずっと
真由香達の言葉がフラッシュバックしていた。
『菜乃ってぶりっ子だよねぇ~?
男に媚びってさ。
絶対に自分の子と可愛いと思ってるよ』
『分かる~私、あの子の声。嫌い。
気持ち悪くてさ……もう喋るなつっ~の?』
『アハハッ……そうそう。マジでキモいよね。
ぶりっ子、声がキモいって最悪じゃん。
もう死んだ方が良くない?私なら恥ずかしくて死ぬわ』