翔馬君の笑顔に私も釣られて笑った。
すると美紀子さんは、クスッと微笑むと
1枚の用紙を取り出した。

「ねぇ菜乃ちゃん。
夏休みだけでもウチでバイトしてみない?」

そう言い私に用紙を見せてきた。バイト……?
美紀子さんの言葉に驚いた。
まさか……バイトに誘われてしまった。

「わ、私がですか!?」

私なんかがバイトが出来るなんて思っても見なかった。
だって……ずっと引きこもりで学校にだって
まともに行っていないのに。
人見知りで接客するとか考えたこともなかった。

「無理とは言わないけど、今日見ていて
どうかなぁ……?と思ったの。
丁度バイトを募集しようと思っていたところだし
夏休みだけでいいからどうかしら?」

美紀子さんからの素敵なお誘いだった。
正直迷うところもあった。
接客とか私なんて……無理無理。

私なんかが出来る訳がない。
でも、もしバイトをすることになったら
このお店に行きやすくなる。
わざわざ行く理由を探さなくても良くなる。
それは、とても魅力的だった。

「菜乃。丁度いいじゃん。やりなよ?
そうしたらタダでケーキが毎日食えるぜ」

えっ……?

「こら、翔馬君ったら。もう……。
でも菜乃ちゃんのやりやすいようでいいから
私達は、大歓迎よ!」

美紀子さんは、翔馬君を叱りながらも
笑顔でそう言ってくれた。
本当は、やりたい……凄くやりたい。

「あの……両親や祖母に聞いてからでもいいですか?
許可を貰わないといけたいので……」

私は、戸惑いを誤魔化すように両親や祖母に
聞いてからと言った。すぐに返事が出来なかった。
それに未成年だから親の許可が居るのは事実だ。