「じゃあ菜乃は、そっちの台な。
絞り方は……こうやって持って」

翔馬君は、私にも分かりやすいやり方で
絞り方を教えてくれた。ふむふむ……こうかな?
ケーキ作りなんてやったことがない。
私は、慣れない手つきで真似して絞ってみた。

「もう少し力を入れて……」

「こう……?
あぁ、飛び出しちゃった」

力を入れ過ぎてカップケーキから
思いっきり飛び出してしまった。やっちゃった……。
そう思いながらチラッと翔馬君を見る。
すると翔馬君は、アハハッと吹き出していた。

「アハハッ……菜乃。下手くそだって」

「だって……初めてなんだもん」

あまりにも笑うから私まで笑い出してしまった。
こんなに笑ったのは、久しぶりだった。
何だか楽しい気分になった。

「じゃあ、もう1回な」

「う、うん」

私は、気を取り直してもう一度
生クリームを絞るのにチャレンジする。
今度は、マシな形になった。
で、出来た……これでいいかしら?

「おー今度は、上手くやれたじゃん」

「う、うん。こんなのでいいのかな?
お店に出したら変じゃない?」

「いいって、いいって。
こっちの方が味があって旨そうだし」

翔馬君は、そう言うと手を私の前に出した。
そしてニカッと笑った。あ、ハイタッチ……。
私は、手を出すとパシッとハイタッチした。
翔馬君とハイタッチが出来て
私の胸はドキドキと高鳴っていた。