どうしよう……このままだとお店の中に入れない。
こういう時にいくじかない自分が情けない。
モジモジしているとまた入り口のドアが開いた。
お客さんかな?と思ったら美紀子さんだった。

「あ、やっぱり菜乃ちゃんだったわね。
姿がチラッと見えたからもしかしたらと思ったのよ」

チラッと見えたって……えっ!?
そんなに目立ってたの?私……。
中から丸分かりだと気づくと何だか恥ずかしくなった。

「すみません……お使いに来たんですけど
何だか恥ずかしくて……」

「アハハッ……気にしなくて気軽に入って
来れば大丈夫よ。お使いは、何を買うの?
暑いから中で涼しいんでいったら?」

「は、はい。ありがとうございます。
お使いは、牛乳とここの抹茶ケーキを……」

「あら、抹茶ケーキ?
嬉しいわねぇ……どうぞ。中に」

私は、やっと買う目的の物を言うことが出来た。
美紀子さんは、ニコッと笑うとドアを開けて
中に通してくれた。私は、緊張しながら
お邪魔しますと言い中に入っていく。
美紀子さんは、それを聞いてクスクスと笑っていた。

中に入るとお客さんは、1組程度だった。
丁度お客さんが少ない時間帯に来たらしい。
キョロキョロと見ながら翔馬君を探すが
何処にも居なかった。

あれ?翔馬君が居ない……。
今日は、お手伝いしていないのだろうか?
居ないと分かると残念な気持ちになった。

「あの……翔馬君は?」

「あぁ、厨房の方に居るわよ?
今、主人の手伝いをしているわ」

厨房の方でお手伝い!?
美紀子さんの言葉に驚いた。
まさか厨房に居るとは思わなかった。

「良かったらこっそりと覗いてごらん。
そこから見えるから」

「いいのですか?」