「では、失礼します」

頭を避けて行こうとすると笑顔で手を振ってくれた。
楽しい寄り道になった。
祖母の自宅に帰ると遅いので心配していた。

「菜乃ちゃん。遅かったわね?
迷子になっているのか心配したわ」

「ごめん……お祖母ちゃん。
ちょっと寄り道をしていたの」

「寄り道……?」

「うん。素敵なケーキ屋さんを見つけてね」

私は、それから夕食を食べながら
今日出会った翔馬君のことを話した。
店内の様子や美紀子さんのことなど話題が尽きない。
すると祖母は、すぐに何処のケーキ屋か
分かったようだった。

「あぁ chocolat(ショコラ)というお店だね。
あそこのケーキは、美味しいって近所でも有名よ!」

「そうなの!?」

「えぇ私も買いに行ったことがあるわ。
特にチョコケーキが美味しいの。で、あなたが
言っていた車椅子の翔馬君だったかしら?
その子にも会ったことがあるわ」

「そう。その子だよ……お祖母ちゃん」

私は、嬉しくなる。有名なんだ……あのお店。
自分のお気に入りのお店を誰かに知ってもらえたのは、
何だか嬉しくなる。

「確かに明るくていい子ね。確か……小さい頃に
交通事故で車椅子になったのではなかったかしら?」

交通事故!?
私は、翔馬君の車椅子になった原因を聞き
驚いてしまった。
確かに車椅子になるには、何かしら理由があるはずだ。