「……いじけたくもなるだろ。俺は、車椅子だから
まともに受け入れてもくれない。
せっかく賞を取ってもこの様だ。お前らだって
内心仕方がないと思っているんだろ!?」

翔馬君……!?

「はぁっ?仕方がないで片付けるな。
これは、お前にとって乗り越えねぇーといけない壁なんだ。
言い訳して逃げて……それでいいのか?
お前は、それで満足なのか?
お前のことを心配している松嶋のことも少しは、
考えてやれよ!!」

激怒する村瀬君だったが私の気持ちも考えてやれと
優しい言葉も入っていた。
それは、1人じゃないという意味でもあった。
そうだよ……翔馬君。私も……。

「何だよ……人の気持ち分かったみたいに。
今までまともに女子と口を聞けなかったくせに
何で今さら菜乃と親しく喋ってんだよ!?
お前は、菜乃のことが好きなのか?
だったらさっさと告白でもして俺から
奪い取ればいいだろ!!どーせお前らも……」

翔馬君が、とんでもないことを口走りそうになった。
歯を食いしばり殴ろうとする村瀬君に対して
私は、思わず翔馬君の頬を叩いた。いや……叩いてしまった。
自分でも驚いてしまった。
まさか、人に怒鳴ることも出来ない私が
自分から人を叩くなんて今までなかった。
想像すらしていなかったからだ。

「な、菜乃……?」

「……松嶋……!?」

驚く翔馬君と村瀬君。
唖然としている2人は、私は、涙を浮かべながら
翔馬君に対して怒鳴った。

「勝手なことばかり言わないで。
私だって頑張って……人前に出ているんだよ!?
ずっとイジメられて人の目が怖くて……でも翔馬君が
そばに居てくれたから前向きに頑張れた。
なのに、その翔馬君が後ろ向きになってどうするの?
車椅子が何?私は、車椅子の翔馬君が好きなの。
大好きなの。それなのに……自分でも自分のことを
否定しないで。一回ぐらいダメでもいいじゃない?
まだまだチャンスがあるんだから
今度こそ留学するぐらいの気持ちでいないと、どうするのよ!!」

私は、自分の気持ちをぶつけた。
イジメられたから人前に出るのが怖い。
また何か言われたらどうしようとそればかり考えていた。
でも、翔馬君と会って人生が変わった。
こんな私でも受け入れてもくれる人達が現れて
私は、本当の意味で救われた。
自分を大切にすることが出来た。

翔馬君は?翔馬君は、そうじゃないの?
私と出会えて……良かったと思えたのなら
そんな悲しいことを言わないでほしい。
前向きに……一緒に居てほしい。それは、私の願いだから……。

涙を流しながらそう訴えた。
翔馬君は、驚いた表情をしていたが、すぐに
泣き出しそうな切ない表情をしていた。