インパクトか……。
私は、何かないものかと考えた。
するとフッと璃空君のことを思い出した。
プリンが大好きな璃空君は、大きなプリンが乗った
ケーキを嬉しそうに選んでいた。
「あ、そうだ。これなんてどうかな?
ムースをスポンジの中じゃなくて上に乗せるの。
こう大きなプリンみたいに……そうしたら
インパクトがあるし美味しそうじゃない?」
「あーなるほど。だとしたら季節的に
甘い苺のムースがいいよな?あ、ヨーグルトも入れて
見た目も華やかなピンクで可愛いし女性受けとか良さそう」
「あ、ならさ……周りにこうやって」
不思議だ。やる気を出すと私も翔馬君も
次から次からアイデアが浮かんできた。
食べたいケーキやお店にあったらいいなと思うケーキ。
夢を形にしている。
それは、将来の叶え方にも似ていた。
翔馬君とケーキの話をするのは、楽しい。
大好きなケーキに囲まれて作る楽しさも知った。
もっとやりたいと思う自分も居た。
これを私の夢に出来ないだろうか……?
そんな風に考えるようになっていた。
私の夢。翔馬君の夢……それを型に出来たら
素晴らしいことだ。
少しずつだが私も何かを掴もうとしていた。
そして話し合った結果は、バケツみたいな
大きな苺のヨーグルトムースを乗せたケーキを作ることにした。
周りに砂糖で出来た花を飾ることにした。
見た目も華やかで小さな子供だけではなく女性にも
喜ばれそうだ。
翔馬君の叔父さんに材料や作り方を教えてもらい
自分なりにアレンジもした。
もちろん何度も失敗したが、そのたびに改良して
コンテストに出せるまでに仕上げた。
そして運命のコンテストの日。
翔馬君と私達は、会場に向かった。
自分で作りそれを審査するらしい。
私は、不安はあったが翔馬君ならやれると信じていた。
そのためにずっと頑張ってきたんだもの。
コンテストが始まると早速作り始める翔馬君。
翔馬君は、車椅子のために特別に低いテーブル席を
用意してもらった。ビスケットを袋へ入れ麺棒で砕き
溶かしバターを混ぜ合わせから型に敷き詰め
冷蔵庫で30分寝かせた。
苺のヘタを切り取り、耐熱容器に入れてる。
そしてラップをしてから600Wの電子レンジで2分加熱。
その間に泡だて器で苺を潰し無糖ヨーグルトを加え
混ぜ合わせた。
テキパキと動く翔馬君は、普段やっているのと
練習の成果が出ていた。
スポンジ作りも上手く焼き上がると冷まして
生クリームを全体に塗る。
そして苺のヨーグルトムースを上に乗せた。
形も綺麗で、それだけでも十分に美味しそうだった。
周りに絞り袋に入れたクリームを絞り
用意した砂糖の作った花で飾り付けた。
見た目も華やかでスポンジもムースも綺麗に仕上がっている。