悩んでいると亜美ちゃんのお母さんが
私のところに近づいてきた。
40代ぐらいだろうか?セミロングで綺麗な人だ。
「この前は、娘が失礼なことを言ってごめんなさい。
どうしても直接謝りたいと言って聞かなくて
涼太君に聞いて教えてもらったの。勝手にごめんなさいね」
「そうだったんですか。別によろしかったのに」
今は、気にしていない。
確かに驚いたし悔しかったりもしたが
亜美ちゃんの気持ちは、十分に理解が出来た。
それにハッキリしない私も悪かったのだ……。
お話でも……と言うので車の前まで行くと
後部座席の窓が開き亜美ちゃんが顔を出した。
やっぱり可愛らしい子だなと思った。
涼太君が好きになるのも頷ける。
「あ、あの……この前は、ごめんなさい。
いくら腹が立ったからってあんな言い方は無かったって
反省して……本当にごめんなさい」
深々と頭を下げる亜美ちゃんに私は、
逆に申し訳ないと思った。悪くないのに……。
「あの……別に気にしていないから。
私が悪かったの。ちゃんとハッキリとしないまま
中途半端にしていたから……それに。
もうこうやってココに居られる事になったし」
「それだけじゃないの!」
えっ……?
それだけじゃないとは……どういうことだろうか?
私は、意味が分からずにきょとんとした。
亜美ちゃんは、落ち込んだ様子で顔を上げた。
「私が言いたいのは……それだけじゃないの。
翔馬……今コンテストに出るか悩んでいる。
もし受賞したらフランスに留学出来るけど、それだと
あなたと離れ離れになるからって。
でも……それだと翔馬の夢がダメになる。せっかくの
有名パッティシェになるチャンスなのに……」
「亜美……ちゃん?」
「私のことを嫌ってもいい。もう二度と顔も見せないから
だから……翔馬の夢を応援してあげて!!
あなたなら、背中を押してあげられるから
だから……お願いします」
震えるような声で頭を下げてくる亜美ちゃん。
彼女は、謝りに来たかったのではなく私に頼みに来たのだ。
私なら翔馬君の背中を押してあげられるから
必死に頭を下げる亜美ちゃんの姿に動揺する。