「私だって応援したい。頑張ってほしいと思っている。
でも……離れ離れなんだよ?
不安になるのは、仕方がなくない?」
なんて惨めな言い分だろう。
村瀬君に、こんな風に言っても仕方がないのに。
こんなの困らすだけなのに……。
「ならその気持ちを翔馬にぶつけてみろよ?
本人に言えないのは、少しでもそれに対して
罪悪感があるからだろ?それに俺達は、
もうすぐ進路を決めないといけねぇ。今のままで
いいと思っているのならいいが。
少しでも可能性があるのなら選択肢に選ぶのは、当然だし
別に俺は、悪いことだと思わねぇ……」
進路……。
そうだ。私達は、来年3年生になる。
大学に行くなら受験もあるし、専門学校や
就職……いつまでも一緒とは限らないし、どちらにしろ
離れ離れになる可能性だってある。
私だって将来何をやりたいのか決めていないのに
翔馬君の進路に口出しを出来る資格はないんだ……。
「……村瀬君は、進路とか決めているの?」
「お、俺?俺は、大学。親父がちゃんと大学に
行っとけってうるせーし。まだチビ達が小さいから
困らねぇー程度にやるつも……って何で泣くんだよ!?」
村瀬君の言葉を聞いたら涙が溢れてきた。
酷いことを言われたとかじゃなくて、村瀬君も
色々と考えているのだと分かり
何だか自分だけ取り残された気持ちになったからだ。
結局は、自分のワガママだと思い知った。
この後は、綾ちゃん達にイジメるなと言われたり
涼太君のお兄さんに心配されたりしたが
私は、気持ちが揺れたまま落ち込んでしまった。
学校が終わり帰り道。バスから降りて自宅に
向かう途中に1台の車が自宅前に止まった。
誰だろうか……?
気になり見ていると運転席の窓が開き
中年女性が出てきた。しかしその女性に見覚えがあった。
亜美ちゃんのお母さんだ!?
亜美ちゃんとそのお母さんに会ったのは、
イオンの時以来だ。何か気まずいままになってしまい
謝ることも話すことも出来ていない。
すると亜美ちゃんのお母さんは、私を見つけるなり
深々と頭を下げてくれた。
な、何で……ウチに?
私と亜美ちゃんは、直接関係ない。
それこそ、どうやって自宅まで知ったのだろうか?