私の言葉に乗り気になる翔馬君に私は、
ズキッと胸が痛んだ。応援はしている。
頑張ってほしいし、翔馬君なら夢ではないとも思っている。
だがらなのか……不安しか残らなかった。

それから翔馬君は、審査に出すケーキの案を考えていた。
コンテストには、自分の自作のケーキを出さないとならない。
インパクトのあるのや贅沢な素材を使った
ケーキもあるかもしれない。それに勝つためには、
それなりの物を作らないとならないらしい。
私は、その姿を複雑な気持ちで見ていた。 

「どうしたんだ?さっきからため息ばかり
入っているな?」

「あっ……村瀬君」

学校でもため息ばかり吐いていたから
村瀬君が気になって声をかけてくれたらしい。
申し訳ない気持ちになりながらも苦笑いする。
「あのね……」と私は、村瀬君に事情を話した。
幼馴染みの彼ならどう思うのだろうか?と気になったからだ。

「なるほどな……それで悩んでいたのか。
しかしアイツ……すげぇな。
ケーキのコンテストだなんて」

ジュースを飲みながら驚いていたが感心していた。
確かに凄い。自分から勧めておいて何だが
私だったら参加していただろうか?
自信がないからきっと辞退していたからもしれない。
だからこそ頑張ってほしい気持ちもある。

「いいんじゃないか?翔馬がやる気になっているのなら
アイツは、意志が固いから
一度決めたら絶対に手を抜かないぜ。
それで大賞を取れたらやっぱり凄い奴だったんだと
証明になるしな」

「で、でも……もしも賞を取ったらフランスなんだよ?
フランスなんて遠いよ……。
村瀬君は、平気なの?なかなか会えなくなっても」

「会えないからって別に何も変わらんだろ。
それに、全力でやろうとしている親友を応援しないで
どうするんだよ?」

真っ当な意見をぶつけてくる村瀬君。
ごもっともだ。会えないからってどうなる訳でもないのに。
私達の関係は、ずっと続くと思っているし
彼女なら応援するのは、当然のことだ。
なのに……心の底から応援出来ない自分が居た。
しゅんと落ち込んでしまう。

「お前が心配なのは、コンテストの結果より
フランスに行った後の寂しさの方だろ?
気持ちが離れてしまうのではないかとか、会いたい時に
会えないのが耐えられないんじゃねぇーのか?」

うっ……何とも痛いところを突いてきた。
心臓がえぐられる気持ちになった。
それは、図星を言われたからだろう。私が心配なのは、
コンテストよりフランスに行った後のことだ。
遠距離なんて……悲しい。