牢獄の隙間や鍵穴など、ありとあらゆるものを触れたりして試してみたが、逃げ出せそうな糸口は見つからず、二人は床に座り込んだ。

「ねえ? お絹は妖力が強いのよね? 力では何ともならないの?」
手を伸ばして壁の石を押しながら惟子は尋ねた。

「それは無理ね。私の力が強い方といっても、この〝下”は完全な力で封じ込められているわ。私ごときの妖力なんて無いに等しいわ」

大きなため息をついたお絹に、惟子は先ほどの話を思い出した。

「そうよ。ねえ? どうしたら私の結界がとけるのかしら? この石を外せばいいのかしら。でも……」
もう一度胸元から石を取り出して惟子はジッと見つめると、石は鈍い光を放った。

「外すのはよくないと思うわ。きっとサトリ兄さまの守りがなくなればきっとあなたのことがすぐにわかってしまう」
お絹の言うことはもっともだが、今の状態ではサトリにも見つけてもらえない。

「こんなことになるなんて……」
惟子は大きくため息を付いた。

しばらく二人は途方にくれながら時間を過ごしていた。

別の階にも捕らわれたあやかしがいるのだろうか?
時折なにやら物音がきこえることもあった。

「ねえ、黒蓮はどうして妖力が必要なのかしら」
脱出することは諦め、惟子はごろりと横になった。

「さあ。私もよくわからないのだけど、絶対的な王になるために必要とか連れてこられた時に聞いた気がするわ。
完璧な覚醒がどうとか……」

「覚醒ね……あれ? 黒蓮ってなに?」
昔見たときの黒蓮は禍々しい感じはしたが、見た目は特に変わったところはなかった。

「何って……黒蓮様は純血統の竜よ。サトリ兄さまはお母様が違うから……」

「竜……ドラゴン」
呟くように言った惟子に、お絹は言葉を続けた。

「伝説でしかないのよ。真のドラゴンになれるなんて。金色に輝く竜。黒蓮はさんざん悪いことをしてきた奴よ。そんなのが伝説になんかなられて、このカクリヨの王になるんなんてありえない。それならサトリ兄様が……」
そこまで言ってお絹は言葉を止めた。

「でも、サトリ兄さまは自分が王位に就く気はまったくないのよね」
「そうなの?」
お絹のその言葉に惟子は驚いて目を見開いた。

「ええ、私はずっと兄さまがそうなればいいと言っていたのよ。俺はその役割は向かないそう言ってたわ」

〝その役割は向かない”
確かにサトリならそういうかもしれない。惟子はそう思った。
いつも優しく惟子を見つめる目を思い出す。
自分のことよりも、相手のことを考える優しい旦那様。
別の階にも捕らわれたあやかしがいるのだろうか?
時折なにやら物音がきこえることもあった。

「ねえ、黒蓮はどうして妖力が必要なのかしら」
脱出することは諦め、惟子はごろりと横になった。

「さあ。私もよくわからないのだけど、絶対的な王になるために必要とか連れてこられた時に聞いた気がするわ。
完璧な覚醒がどうとか……」

「覚醒ね……あれ? 黒蓮ってなに?」
昔見たときの黒蓮は禍々しい感じはしたが、見た目は特に変わったところはなかった。

「何って……黒蓮様は純血統の竜よ。サトリ兄さまはお母様が違うから……」

「竜……ドラゴン」
呟くように言った惟子に、お絹は言葉を続けた。

「伝説でしかないのよ。真のドラゴンになれるなんて。金色に輝く竜。黒蓮はさんざん悪いことをしてきた奴よ。そんなのが伝説になんかなられて、このカクリヨの王になるんなんてありえない。それならサトリ兄様が……」
そこまで言ってお絹は言葉を止めた。

「でも、サトリ兄さまは自分が王位に就く気はまったくないのよね」
「そうなの?」
お絹のその言葉に惟子は驚いて目を見開いた。

「ええ、私はずっと兄さまがそうなればいいと言っていたのよ。俺はその役割は向かないそう言ってたわ」

〝その役割は向かない”
確かにサトリならそういうかもしれない。惟子はそう思った。
いつも優しく惟子を見つめる目を思い出す。
自分のことよりも、相手のことを考える優しい旦那様。
そんなサトリだから、惟子はこの2年で、このカクリヨに乗り込んでまでもサトリを助けたい。
そう思うほど、サトリに対する気持ちが大きくなったのだ。

「サトリさん……」
惟子は呟くようにサトリの名前を呼んでいた。