「わかりました。でもサトリさんは私なんかを娶ってなにかいいことあるんですか?」
その言葉にサトリはクスリと笑みを見せた。

「惟子は特別だからな」
「特別?」
そう言うと、浴衣の腕をまくるとサトリは腕を惟子に向けた。

「これ!」
そこには痛々しいほど真っ赤に腫れあがった傷があった。
すぐに先ほどの黒蓮から自分を守ってくれた時と分かり、惟子は泣きそうな顔をサトリに向ける。

「惟子、ここに触れて」
その言葉に驚いて、惟子はサトリを見上げた。
躊躇する惟子に、サトリはさっと腕を隠そうと袖に触れた。
「気持ち悪いな」
「違うの!触ったら痛くないのかなって……」
「え?」
驚いたようなサトリの顔に、惟子はそっと傷口に触れた。
シュウと音を立てて、まるで傷口が溶けるような液体をかけたようになり、惟子は慌てて手を放そうとした。
「大丈夫だからそのまま」
少しだけ苦痛に顔を歪めたサトリだったが、惟子の手に自分の手を重ねた。

ほんの数秒、その傷は跡形もなく消えていた。

「うそ……」
「これが俺のメリットだ。惟子には浄化の力がある。だから俺にもメリットは十分だ。わかったか?」

よくわからないが自分には何かの力がある。
自分も普通ではない。
そのことがすっと心に入ってきて、今まで自分がおかしいのではと思った事もあったが、なぜか心が軽くなった気がした。

「わかりました。旦那様。よろしくお願いします」
その言葉に、サトリは優しく微笑むと、惟子の左手をそっととる。

「これは契約の証だ。そして惟子誕生日おめでとう」
惟子の左手の薬指に、七色のきれいなアンティーク調の指輪が光っていた。

それはとてもきれいで、温かくて、惟子は自然に笑みが零れた。
「一緒にご飯を食べて行ってくれますか?旦那様」
自然と口をついた惟子の言葉に、サトリはゆっくりと頷いた。