「土橋くん、これ見て。」

春宮さんがちくわパンを持ち上げて俺に見せてくる。

「ちくわの中に何か詰まってる。」

そう言って口を尖らす。
磯辺揚げのときも、衣で穴が埋まっていた。
ちくわパンのちくわの中には何が詰まっているんだろう?

「ツナ…かな?」

俺が言うと、またしても「先が見通せるちくわじゃない。」とご立腹だ。
もちろん冗談で怒っているのはわかっているけど、そんなコロコロ表情を変える春宮さんを見ているだけで幸せな気分になった。

「そんな簡単に先は見通せないんだよ。自分で切り開かないと。」

ちょっと偉そうなことを言って、俺はちくわパンにがぶりとかぶりつく。
どこか懐かしい味がして、とても美味しい。

「そんなかっこいいこと言って、土橋くんずるい。」

春宮さんもパンにかぶりついた。

「美味しい~。やっぱりちくわは最強!」

嬉しそうにモグモグ食べる。
本当に些細なことだけど、パンを両手で持って口に運ぶ姿や、ペロリと唇を舐める姿も本当に可愛い。
春宮さんの性格だけじゃなくて、顔も仕草も雰囲気も、なんというか、全体的にやっぱり好きだなぁと改めて感じてしまった。