「お店がたくさんで目移りしちゃうね。」

春宮さんがお上りさんかのようにキョロキョロしている。
彼女と適度な距離を取りつつも、はぐれないように横に並ぶ。

模擬店は本当に個性的だ。

どこで仕入れたのか、はたまた私物なのか、本格的なたこ焼き器が揃っているたこ焼き屋。

籠に生きた鶏が入れられている焼き鳥屋。ハナ子に赤字でバッテンが書かれている。まさか、自分達で絞めて捌いているのか…?

中国人留学生による本場のチャイナドレス屋。種類も豊富らしく、女子が群がっている。

裏山で採った竹からコップを作って、そこにお酒を入れて提供する飲み屋みたいな模擬店。

完全ハンドメイドの懲りまくったアクセサリー屋。

普通の模擬店はないのかと思うほど、どれもユニークだ。
見ているだけで面白いし、春宮さんが次から次へ「これは?あれは?」と目をキラキラさせながら俺に話しかけてくるのが可愛くてたまらない。

途中、友達に発見されて「つっちーの彼女?」とストレートに聞かれたけど、俺は歯切れの悪い返事しかできなかった。
そんな俺に対して、春宮さんは何も言わないけれどニッコリ微笑み返していた。
彼女じゃないなら俺に紹介してよなんてバカげたことを言ってきたので、断固拒否しておいた。

まだフラれたわけじゃない。
俺にだってまだ希望はあるだろ?
あるかな?
いや、だけど、春宮さんは渡さない。