いつも通りのバイトが終わって帰ろうとしている春宮さんを呼び止める。
これまたいつも通りにスカートをふわりと翻し、少し首をかしげながら振り向く。
自然なんだろうけど、その仕草はいつ見てもドキッとさせる。

「うちの大学で学祭があるんだけど、一緒に行かない?」

「学祭?」

キョトンとした顔で俺を見上げる春宮さんがいじらしい。

「大学で模擬店とかイベントとかやるんだけど、どうかな?」

「お祭りみたいな感じだね?楽しそう、行きたい。」

緊張して誘ったのにすんなりOKが出て、俺は拍子抜けしてしまった。
これは、まだ期待を持ってもいいということだろうか?
いやいや、勝手に勘違いして舞い上がるなよ、俺。
俺の理性と自制心が試される時だ。
心の中で何度も自分を戒めた。

春宮さんは学祭は初めてらしい。
そもそも学祭自体を知らない様だった。
かく言う俺も、大学の学祭は初めてだ。
サークル等には入っていないから模擬店には参加しないが、その分じっくりと見て回れるってもんだ。
しかも、春宮さんと。

俺は顔がほころぶのを必死で抑えながら、至ってクールに振る舞った。
心の中では、ひゃっほーいと小躍りしていたのは秘密だ。