「でも、電話もくれなくなったじゃない! 前はどんなに空いても週に一度は会いに来てくれたのに、こっちからかけた電話にすら出ないし……」
「出られなかったんだよ!」
語尾にいくにつれて涙声になってきたミユさんに、村上さんが訴える。
そのとき、二人を見守っていた真斗さんが一歩前に出た。
「わかりました。では、電話に出られなかった事情を教えてもらえますか?」
落ち着いた声で真斗さんに語りかけられた淳一さんは暫く地面を見つめたまま沈黙していたが、黙っていても何も解決しないと悟ったようで深い溜め息をついた。
「サイドワークを始めたんだ。昼間の会社の勤務が終わった後、夜の八時から深夜〇時まで。あと、土日も……」
仕事が終わった後に夜八時から深夜〇時まで? しかも、土日も!?
それは完全なるオーバーワークではないだろうかと私は驚いた。
私と同じように感じたのか、はたまた違う理由なのかはわからないが、ミユさんも驚いたように目を見開く。
一方の真斗さんは、そのことを予想していたかのように、ふむと頷いた。
「それは、恐らくお金が必要だったからですよね?」
「ああ」
淳一さんは真斗さんの質問に一瞬渋い顔をして、ぶっきらぼうに答える。真斗さんは落ち着いた様子で先を促した。
「そこまでして、なぜお金が欲しかったんですか?」
淳一さんはまた黙り込む。
そして、口許を歪めてミユさんの方を見つめた。ミユさんはじっと淳一さんの顔を見つめていたので、二人の視線が絡み合った。
どれくらいそうしていただろう。
すぐ後ろにある噴水が時間を流れを示すように優しい水音を鳴らし、遠くからは時折子供の声が聞こえてきた。
「汐里に渡す指輪が買いたかった……。昔、憧れているって聞いた指輪を」
淳一さんは苦しげにそう漏らした。
その瞬間、ミユさんの元々大きな瞳がこぼれ落ちそうな位見開かれる。信じられないと言いたげに、口許を手で覆う。
そこから淳一さんが語った話は、まだまだ人生経験の乏しい私には到底思いもよらないことだった。
淳一さんとミユさんの出会いは、お店で働く女の子とお店を訪れた客という、ありふれた関係だったという。仕事の関係の接待でお客さんを連れて先輩社員と共に初めてミユさんの働くキャバクラを訪れた淳一さんは、明るく朗らかなミユさんに一目惚れしたそうだ。
少ない給料をやりくりして店に通い、ミユさんと親しくなろうと必死に口説いた。熱意が伝わったのか、はたまたミユさんも元々淳一さんに好意があったのかはわからないが、その後ミユさんと淳一さんは店の外でも会うようになり、いつしか交際へと発展する。
ミユさんは、綺麗で華やかなだけでなく、明るくて親しみやすい魅力的な女性だ。だから、淳一さんは何度かミユさんに、只でさえ魅力的なミユさんが多くの男性と知り合う今の仕事を「やめてほしい」と伝えたそうだ。
ミユさんが仕事に行く度に、そして誰かから贈り物をされる度に、淳一さんの中で『いつかミユさんが他の男性に取られてしまうのでは』という猜疑心と焦燥感が高まる。
けれど、ミユさんは淳一さんがその言葉を告げても曖昧に微笑むだけで、仕事を辞めてはくれなかった。
「……なんで、ミユさんは夜のお仕事を辞めなかったんですか? すごくこの仕事が好きだったとか?」
話の途中だったけれど、私はおずおずとミユさんに尋ねた。ミユさんは眉尻を下げると力なく首を左右に振った。
「ううん。この仕事が向いているというか、そこそこ人気があったっていうのもあるけど、本当の理由は別。私ね、高校卒業してすぐにこの世界に飛び込んだの。資格も学歴もなければ職歴もこれしかない私を昼間に雇って、独り暮らしができるようなお給料をきっちりくれるような会社、きっとあるわけないって思っていたの。それにね、私の同僚もお客さんと付き合い始める人は多いんだけど、長続きしないことも多いんだ。だから、この仕事を辞めて華やかさがなくなったら、淳一もすぐに私に飽きてしまうだろうって思ってた」
「そんなことないっ!」
淳一さんは声を荒らげる。
うーん、よくわからないけれどこの二人がものすごく拗らせていることはわかった。
淳一さんは膝の上に乗せた両手を、ぎゅっと握り込む。
「俺、汐里のお客さんに負けたくなくて、ネックレスをプレゼントしたんだ。『お前が貰ってくるプレゼントよりずっといいものを、俺でも買ってやれる』って言いたくてさ。後は、それをつけてくれている間は、ミユであっても汐里は俺の恋人だって示せている気がして、つまらない男の意地で」
「それが、四元さんがいつもつけている、あのアルハンブラですね?」
真斗さんの問いかけに、淳一さんは頷いた。
「……けど、汐里がつい先日、凄い高価な鞄を貰ってきてさ。これはもう太刀打ちできないって思った。だから、指輪を買ってけじめをつけて、汐里には仕事を辞めてもらおうと──」
「指輪を買って、けじめをつける?」
私は意図を確認するように、淳一さんの言葉を聞き返す。
それはつまり──。
「結婚しようって言うつもりだったんだ。だから、とびきりいい指輪を用意しようと思って……」
「…………。あんた、バカだよ。全然、私のことわかってない」
それまでずっと黙って聞いていたミユさんが、ようやく口を開く。大きな瞳の端から、一筋の涙が零れ落ちた。
「汐里……。ごめん……」
淳一さんは汐里さんを見つめ、酷く傷付いたような目をして肩を落とした。
「ほらっ! また勘違いして! 私、淳一の彼女なんだよ? なんで一言、そう言ってくれなかったの? 私がプレゼントの値段でホイホイ男変えるとでも思ってたの?」
「違う!」
「じゃあ、なんで!」
「ごめん。ごめん、汐里……」
ぽろぽろと涙を流すミユさんの手を淳一さんが握る。
私と真斗さんは顔を見合わせた。
「村上さん、四元さん。二人でよく話し合った方がいいですね」
ミユさんと視線を合わせるようにしゃがみこんでいた淳一さんは、真斗さんを見上げるとしっかりと頷いた。
「ああ、そうするよ。さっきは誤解して暴言を吐いて悪かったね」
「いいえ、大丈夫です」
「ありがとう。汐里、行こうか」
立ち上がった淳一さんが手を引くとミユさんは素直に立ち上がり、チラッとこちらを見ると照れ笑いのような笑みを浮かべた。
「梨花ちゃん、真斗くん、ありがとう」
「いえ。お幸せに」
「……うん。お二人もね!」
今度は朗らかに笑ったミユさんを見返し、私はなんのことかと首を傾げる。
「だって、付き合っているんでしょ?」
数秒間の沈黙の後に、自分が喫茶店でついた嘘をようやく思い出した。
「いや、えーっと……」
「隠さなくていいのに。お幸せにね!」
後ろめたさから思わず視線をさ迷わせてしまう。
淳一さんと繋いでいない方の手を上げると、駅の方向へと歩き始めたミユさんは振り返ってこちらに手を振る。真斗さんの肩にいた文鳥が、パタパタと羽ばたいてミユさんの肩に乗った。
その笑顔はこれまで見たミユさんの表情の中で、一番輝いて見えた。
二人の姿が行き交う人々の陰で見えなくなると、真斗さんはようやくお役目ご免と言いたげに、大きく伸びをした。少し傾き始めた陽の光で、地面に影が延びる。
「さてと。今日はありがとな」
「いえ。…………。あんなに好き同士なのに、なんで拗らせちゃったんでしょう?」
「さあな」
真斗さんは二人が消えていった方角を見つめると、目を細める。
「ミユさん、あの日ネックレスをつくも質店に持ってきただろ? で、本物だって伝えたら狼狽えていた」
「ああ、そうでしたね」
「たぶん、偽物だって思い込むことで、村上さんが会いに来てくれないことを自分の中で納得させようとしていたんじゃないかと思うんだ」
私は真斗さんの言う意味が分からず、首を傾げて見せた。
「あー。つまりさ、ミユさん、お客さんと付き合っても長続きしないことが多いってさっき言っていただろ? だから、村上さんのことも大多数のお客と同じような人で、自分のことは最初から遊びのようなもので、一時の戯れだったと思い込もうとしてたんじゃないかと思ったんだ」
「ああ、なるほど……」
私はようやくその意味を理解して、ミユさん達が消えていった大通りを見つめた。
休日の昼時、通りには行き交う人々の笑顔が溢れている。
アルハンブラのクローバーは幸福の象徴。それを贈ってくれた人が自分に興味を失ったと勘違いしたとき、ミユさんは深く傷ついて最初からその愛情が偽物だったと思い込もうとしたのだろう。
そう思い込むことで、〝よくあることだ〟と自分に言い聞かせて、心を守ろうとしていた。
「それだけ、好きだったんでしょうね。お互いに」
「だろうな。まっ、今度は上手くいくだろ」
真っ黄色に染まった街路樹を見上げていた真斗さんは、私と目が合うと口許を綻ばせた。
「真斗さん凄いですね。的確に謎解きしていく姿、シャーロックホームズみたいでしたよ」
「半分くらい、あの付喪神から事前に聞いていたことだけどな」
「わかっていますよ。でも、したり顔で仲を取り持っていくところ、なかなか様になってました」
褒められた真斗さんは悪い気はしなかったようで、こちらを見下ろして目を瞬かせると、少し照れたように笑う。
「今日、助かったよ。あの店で、遠野さんが機転を利かせてくれなかったら俺が殴られて最悪暴行騒ぎの警察沙汰になっていたかも」
「私、役に立ちました? よかった!」
「大助かり。まだ三時だから、お礼にどっかで御馳走してやろうか? 駅前の甘味でもいいし、アメ横まで歩いてもいいけど……」
「お礼……。いいんですか?」
思わぬ申し出に、私は目を輝かせる。
お礼をされるような大したことは何もしていないのだけど、さっき、動物園で買ったと思われるバルーンを持った子供が通り過ぎるのが目に入って、気になっていたのだ。
「私、動物園行きたいです。付き合って下さい」
「動物園?」
「はい。そこから入って、池之端門から出たらつくも質店も近いし、私も帰りの電車に乗りやすいし」
私はそこで言葉を切って、にっと笑って見せる。
「それに、今日は真斗さん、私の彼氏さんでしょ? デートですよ」
「その設定、まだ続いているの?」
「まあまあ、いいじゃないですか。今日だけです。行きましょ行きましょ。可愛いパンダが見たいんです」
「パンダが可愛いっていう奴って多いけど、あれ、一応熊だぞ」
「いいんですってば!」
私は真斗さんの腕を引いて上野動物園の正面口へと向かう。
「で、動物園終わったら『みはし』のあんみつを食べに行きましょうね」
「お前、それ池之端門じゃねーだろ……。上野駅じゃねーか。真反対側だ」
あら、バレちゃった。でも、真斗さんが和菓子好きらしいというのはもうわかっていますよ。
「じゃあ、湯島の『みつばち』の小倉あんみつは? みはしのあんみつは、今度テイクアウトで買っていきます」
はあっとため息と共に「仕方ねーな」とぼやく声が聞こえる。やっぱりちゃんと付き合ってくれるところが、真斗さんらしい。
一番楽しみにしていたパンダの赤ちゃんはすっかり大人と同じサイズになっていて拍子抜けだったけれど、久しぶりの動物園はとっても楽しかった。
段ボール箱に緩衝材を何重にも敷き、その上に商品の箱をそっと重ねて入れる。今日の商品はどちらも割れ物なので、いつも以上に念入りに包装した。
これまでは質屋と言えば高級ブランドの鞄や小物のイメージだったけれど、実は違うものも多い。
例えば、今日発送のために包装したこれは高級ウイスキーと、有名クリスタルガラスメーカー『バカラ』のウイスキーグラスだった。初めて見たときは飲み物も買い取りすることにびっくりした。
真斗さんによると、リサイクル業をする古物商として営業許可を得るには、それに先立ってどの商品を取り扱うか事前に管轄する公安委員会へ届出する必要があるらしい。
つまり、届け出ていない分類の商品は例えお客様が持ち込んできても取引できず、つくも質店では例えば、骨董品と呼ばれるような美術品は取り扱っていない。
この世界は私の知らないことがたくさんだ。
段ボールの蓋をしてガムテープで止めようとしていると、ガラッと引き戸を開ける音が聞こえてきた。
「お客さんかな?」
私は作業を一時中断して店舗のカウンターへ向かう。
「いらっ──。あ、お帰りなさい」
玄関先にいたのは、飯田店長だった。私と目が合うとにこりと笑い「こんにちは、梨花さん」と言った。
「早いですね」
「思ったより早く終わってね」
出張買取に行っていた飯田店長は、荷物を置くと靴ひもを緩め始める。
郵便が届いていたようで、鞄の横に無造作に置かれた郵便物に混じった絵葉書には室内から撮影した見事な紅葉が映し出されていた。上下を部屋の壁に遮られていることで、返って絵画のような美しさを引き立てている。
「わあ。ここ綺麗ですね」
「綺麗?」
靴を脱いだ飯田店長は、自分の脇に置かれた郵便物の束に目をやり、その絵葉書に気付いたようだ。
「ああ。瑠璃光院だね」
「瑠璃光院?」
「そう。京都の叡山電鉄の「八瀬比叡山口駅」にあるよ。秋の紅葉の季節は一般に公開しているみたいで、とても人気があると聞いたことがあるよ」
「京都か。遠いですね……」
京都というと、ここからだと新幹線で三時間くらいだろうか。この景色の場所は新幹線の駅前ではないだろうから、日帰りだと厳しいだろう。となると、宿泊代もいるから時間だけでなくお金も結構かかる。
行ってみたいけれど、ちょっと厳しそうだ。
「梨花さんは、今年は紅葉を見に行った?」
「この前、真斗さんと上野公園に行く機会があったので、少しだけ見ました。けど、こういう感じではなかったです」
「今ちょうど見ごろだから、見に行って来たらどう?」
「え? ここにですか?」
私は驚いて飯田店長を見つめた。今から? 京都まで?
飯田店長は笑って片手を振る。
「瑠璃光院はさすがに遠いね。ここから近い日本庭園と言えば、本駒込の六義園か小石川後楽園だね」
「後楽園って、遊園地ですよね?」
怪訝に思った私は聞き返す。
日本庭園? この辺で『後楽園』と言えば、東京ドームに隣接する遊園地を指す。入場無料で時間が空いたときなどに手軽に立ち寄れるので、私も時々亜美ちゃんと行ったりする。
「それは『後楽園遊園地』だろ。そうじゃなくって、『小石川後楽園』。水戸徳川家の江戸上屋敷の庭園だよ。遊園地のすぐ近くにある」と真斗さんの呆れたような声がした。
「水戸徳川家? 水戸徳川家って、もしかして水戸黄門の?」
「そう、それ」
「へえ! そんなのがあるんですか? 知りませんでした!」
水戸黄門と言えば『この印籠が目に入らぬか~』って言っているのを、テレビで見たことがある。
あの遊園地には何度も行ったことがあるけれど、そんな庭園があることにはちっとも気が付かなかった。
「ちょうど今度の週末に行く予定の出張査定の対象品が結構たくさんありそうで、真斗も連れて行くつもりなんだ。梨花さんも手伝ってくれないかな? 場所が神楽坂の辺りだから、その前に二人で行って来たらいい」
「なんで俺が?」
真斗さんが眉を寄せて不平を漏らす。
「真斗、小さい頃からあそこが好きだろう? それに、久しぶりだろう?」
にこにこ顔の飯田店長に諭され、真斗さんは不本意そうながらも「まあ、いいけど」と呟く。
相変わらず人がいい。これは初めて会ったときに和装姿だったのも頷ける。たぶん、最初は断ったけれど、困って頼み込む友人を見るに見かねて結局引き受けてしまったのだろうな。その姿の想像がついてしまう。
「でも私、査定作業できませんけど、出張査定に一緒に行っていいんですか?」
「仕分けとか、書類作成とか手伝ってくれればいいよ。かなりの数だから、それだけでも大助かりだ」
「わかりました。じゃあ週末、よろしくお願いします」
私は笑顔でそのお手伝いを引き受けたのだった。
◇ ◇ ◇
約束の週末、真斗さんとは飯田橋駅で待ち合わせした。
飯田橋駅はつくも質店の最寄り駅のひとつである本郷三丁目駅から地下鉄大江戸線に乗れば二駅で、ものの数分で到着する距離にある。
JR総武線を降りて改札口へ向かうと、既に地下鉄で到着していた真斗さんはすぐに見つかった。
ジーンズにグレーのウインドブレーカー、スニーカーという格好はどこにでもいそうな二十代前半の男性のものなのだけど、肩にインコを乗せているのだもの!
「真斗さん、お待たせしました」
「いや。大丈夫」
「フィリップも一緒なんですね」
「オレモ、オデカケシタイ」
フィリップは頭を前後に揺らし、ふるふると羽を振るわせる。
「よし、行くか」
真斗さんの掛け声で、改札を出てすぐに左手に曲がり、大きな歩道橋を渡る。
地面より高い位置を歩きながら辺りを見渡したけれど、見えるのはビルと幹線道路と高速道路ばかり。眼下を行き交う車がけたたましく音を鳴らし、日本庭園とも紅葉とも程遠い。
「こんなところに、本当にあるんですか?」
「あるよ。歩いてすぐ。一本入れば結構静かだよ」
なんの迷いもなくすたすたと歩く真斗さんの横を私もついて行く。
本当かなぁと半信半疑だったけれど、すぐに真斗さんの言う通りだとわかった。歩道橋を渡り終えて一本細い道に入ると途端に車通りがなくなる。先ほどの喧騒が嘘のように辺りを静けさが包み、遠くから部活をしている高校生のような声が時折聞こえてきた。
「どっかに学校があるんですかね」
「学校もあるかもしれないけど、これはそこの運動場からじゃないかな」
真斗さんが指さす前方を眺めると、大きなグラウンドがあるのが見えた。ついさっきまでビルしかないような場所にしか見えなかったのに、数分歩けば全く違う景色になることに驚きを隠せない。
「庭園はあっちだよ。ほら、ちょっと見えるだろ?」
途中でグラウンドを左手に見ながら道を曲がると、遥か前方に少し人が集まっているのが見えた。その脇には和風の白塗りの塀と、石造りの門があり、門の脇にぶら下がっている提灯には『後楽園』と書かれていた。
そのまま中に入ると入園料を支払うゲートがあり、真斗さんが二人分のチケットを買おうとしていたので慌てて押しのけた。
「この前奢ってもらったんで、今日は私が払います」
チケット売り場で押しのけられて呆気にとられる真斗さんにチケットを渡しながらそう言うと、「律儀な奴」と笑われてしまった。
砂利の歩道の両脇に木々が茂り、奥には大きな池。その池の中央には小さな島があり、島の中には赤い社が緑の合間から姿を覗かせている。
ゲートをくぐると、そこは私が思い描く通りの日本庭園の景色だった。