「ジュラ紀に行くことは許さん! 今後一切、ジュラアナ長野へは出入り禁止だ!」

 セラミックの父親は頑固親父の本領を発揮して、ジュラ紀へのダイブを全面禁止したのだ。

「大きく中生代と言った方がいいかも。実際はジュラ紀と白亜紀のちょうど中間らしいから」

「どっちでも一緒だ! おんなじこっちゃ! 未成年の世間知らずな娘のくせに、大人に混じって危険なマネをするのはやめろ!」

 ますます顔を真っ赤にして憤慨する父親を前にして、セラミックは話し合う交渉の余地がないことを悟った。

「そんな~! 酷すぎるよ! 私がどんなに苦労して恐竜ハントまで漕ぎ着けたのか、パパは知っていると言うの?!」

「そんなの知るか! 大事な娘の身の安全を願っての事じゃないか。お前こそ、どうして両親の思いが分からないんだ?」

「わぁああん!」

 セラミックは階段を駆け登って自分の部屋に閉じ籠もった。自分のベッドに俯せになると、頭からブランケットを被って枕を涙で濡らしたのだ。

「本当に酷い。……今までの努力を、私の気持ちを、それに将来、恐竜狩猟調理師になりたいという夢を全く理解してくれないなんて!」

 先日のジュラアナ長野へのダイブ中に起こった事件。……不測の事態に遭遇した事が、落ち着いた時分になってから親バレしてしまった。
 仲間の裏切りで拘束された挙げ句、太古の世界へ置き去りにされかけた事。更にもっと言うと凶暴な肉食恐竜にチームが襲われてしまった事実が、赤裸々に裏表なく保護者に報告されたのだ。
 その時に父親が見せた怒りの表情をセラミックは忘れられない。失態の説明と責任者としてのお詫びに来た松上に、殴りかからんばかりの勢いだった。これにはさすがの松上も平身低頭――いわゆる平謝りで、いつもの飄々とした態度ではいられなかったようだ。
 セラミックの親友の兄でなかったら、どうなっていたのか分からない。一緒に来ていた吉田真美は終始冷静だったが、母親は泣き出してしまった程である。呑気にディノニクス・カレーなど作っている場合ではなかったのだ。

「姉ちゃん! どうしたんや、大丈夫か?」

 ただならぬ雰囲気を察知したのか、弟の公則が心配して部屋の外から声をかけてきた。