矢に射貫(いぬ)かれたように痛むときもあれば、ジワジワと頭を締めつけてくることもあった。たいてい引っ越しの時期が近づくにつれて頭痛はひどくなっていくのだ。


「具合、悪いのか?」
 急に声がかけられ、ハッと顔をあげると、中川広太(こうた)が眉をひそめて近づいてきたところだった。

 彼は身長が高く、バレー部に所属しているらしい。短髪に太い眉毛で、声も大きい。
 彼もまた私に話しかけてくれるけれど、体の大きさに萎縮してしまい、その顔を見ることもなくうつむいてしまう。

「大丈夫か? 痛かったら保健室に連れて行くけど」

 心配してくれているのが伝わるけれど、無言でうつむくことしかできない。

 ――お願い、私に構わないで。

 そう言えたらどんなにいいだろう。
 もしも私が拒絶をはっきりと言葉にすれば、目の前の彼は怒ってしまうだろうし、他のクラスメイトからもなにか言われるかもしれない。

 自分で決めたことなのに揺らいでしまう自分が嫌い。

 昔のことは覚えていないけれど、小学生のころはどちらかといえばおしゃべりなほうだったと思う。