子どもみたいだと思うけれど、本能が拒否するような感覚にはどうしても抗えないままだった。
 そんな私を知ってか、最近はどんなにひどい風邪を引こうとも、お母さんが病院を勧めてくることはなかった。

「そういう子も多いよ。アルコールのにおいがダメとか、雰囲気に拒否反応を示すとか。ま、珍しいことではないけどさ」

 不安を払拭(ふっしょく)するように岡崎先生はあっけらかんと言ってくれた。

「痛み止めとかは飲んでるのか?」

 続いて尋ねられる質問に「はい」と答える。さっきよりも少しだけ声のボリュームを大きくできた。

「母が薬局で買ってくれてて……。それを飲むと少しはラクになります。ちょっとお腹も痛くなるけど」
「ロキソニンっていう薬だね。あれは効くけれど胃も荒れるから。胃薬と一緒に飲むといい」
「はい」

 静かに目を閉じた。