「病院には?」
「……いえ」

 そう答えると岡崎先生は言葉を止めた。
 しばらく待ってもなにも言ってこないので顔だけをあげると、先生のシルエットがカーテンの向こうに映っている。

「あの……病院が苦手なんです」

 意を決して口にすれば、岡崎先生がうなずくのがわかった。

「頭痛には原因がある。ちゃんと検査して服薬治療したほうがいい。どうして病院が苦手なんだ?」

 質問の答えはすぐに頭に浮かんだ。けれど、言葉にするのが難しい。
 しばらく黙っても、岡崎先生のシルエットが動かないので、

「わかりません。ただ、昔から苦手で……」
 と言う。

 意思に反し、なんて小さな声。

 これまでも頭痛に苦しむ私を、お母さんは何度も病院へ連れて行こうとした。
 だけど、病院へ行くと思うとガタガタと体が震えてしまい、どうしようもなくなってしまう。