広太は夢から醒めたように一瞬呆けた顔をしてから、
「クソッ」
 と怒りを吐き捨て、教室から出て行ってしまった。

 足音が聞こえなくなると、教室にいつものざわめきが戻る。

 まだ心臓がバクバクと音を立てていた。

「高丘さん、大丈夫?」

 駿河が声をかけてくれたけれど、もう私はうなずくことしかできなかった。
 私のせいでふたりをケンカさせてしまった。自分が疫病神のような気がしてくる。

 私なんていなければ……。

 激しく痛む頭に、自分を責める言葉しか思い浮かばない。
 それでも、駿河が助けてくれたことをうれしく思ってしまう私がいる。同時に、そんな自分を嫌悪してしまう。

 この世界からいなくなれば、少しはラクになれるのかな……。