見てはいけないものを見てしまった気がしてまた目を伏せる。
 いったいなにが起きているの……?

「お前に話をしてんじゃねえよ。引っこんでろよ、駿河」

 冷たい声で言い放ち、広太が立ちあがるのが視界の隅に映った。

「高丘さんが嫌がっているだろ?」

 駿河の声。

「そんなことねぇ。お前、調子乗ってんなよ」
「そもそも、なんでそうやって俺や高丘さんにだけ絡むんだよ」

 その言葉に思わず体がビクンと震えてしまう。
 言われてみればたしかにそうだ。広太はいつだってクラスの人気者。なのに、私と駿河にだけは怖い顔で話をしている。

 きっと嫌われているんだろうな……。そう思った。

「お前には関係ない」

 広太の声は太く、そして低い。

「関係ある。転入生ばかりいじめているのは、なにか恨みがあるわけ? 高校二年生にもなってバカなことやってんなよ」