どうして私が広太の試合を……?

 背筋を伸ばしたままで答えない私に、広太はその場でしゃがんで見あげてくる。細い目でまっすぐに見つめられ、ますます私は首の角度を深くする。

「いいだろ、な?」

 最近の広太は、威圧的(いあつてき)な態度で接してくることが多かった。きっと私がきちんと返事をしないことが原因だろう。

 無意識に唇をかめば、さっきまでの幸せな気持ちはもうどこにもなかった。
 私がひかりと話をしていたせい? 心の扉の鍵を開けてしまったから、広太もなかに入ってきたの?
 だとしたら、やっぱりひかりと話をするのは避けたほうがいいのかもしれない。

 どうしよう……。

 キュッと目を閉じるしかできない私に、
「いいかげんにしろよ」
 と左から声が降ってきた。

 この声は……駿河だ。

 ハッと顔をあげると、駿河の瞳にはさっきの悲しみはなく、怒りが存在していた。