「……っ」

 声に出る寸前で口をつぐんだ。それは、駿河の表情……いや、瞳がいつもと違って見えたから。
 どうしてそう思ったのかわからないけれど、まっすぐに私を見る瞳に深い悲しみが存在しているように感じた。
 激しく鳴る胸の鼓動がすぐ近くで聞こえている。慌てて椅子に座ってうつむく。

 駿河の瞳が、なにか私に訴えているように思えた。


 私たちは太陽と日陰。まったく正反対のはずなのにどこか似ている。


 そんなことを考えてしまった自分を恥じるように背筋を伸ばして息を整えた。
 まだ駿河の視線が向いている気がして振り返ることができない。

 勘違いしちゃいけない。そう自分に言い聞かせる。
 首を軽く振り、幻想から抜け出すように目を開けると、私の机の上に大きな手が置かれるところだった。思わずビクッと震える体。

「なあ、瑞穂」

 広太の声だとわかっても私は動けなかった。

「今度さ、バレーの対抗戦があるんだけど、観に来てよ」

 周りの音が遠ざかり、今言われた言葉を反芻(はんすう)してみるけれど意味がわからない。